朗詠(読み)ロウエイ

デジタル大辞泉 「朗詠」の意味・読み・例文・類語

ろう‐えい〔ラウ‐〕【朗詠】

[名](スル)
詩歌などを、節をつけて声高くうたうこと。吟詠。「人麿の歌を朗詠する」
平安中期から流行した歌謡で、漢詩文の一節を朗吟するもの。中世以降、雅楽化された。詞章となる詩歌を収めたものに「和漢朗詠集」などがある。
[類語]吟詠朗吟低吟低唱放吟高吟微吟放歌高吟吟ずる詠ずるうた詩歌韻文詩賦しふポエムバース詩編叙情詩叙事詩定型詩自由詩バラードソネット新体詩

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精選版 日本国語大辞典 「朗詠」の意味・読み・例文・類語

ろう‐えいラウ‥【朗詠】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 声高くうたうこと。
      1. [初出の実例]「朗詠叢辺立、悠々忘日斜」(出典:菅家文草(900頃)五・牡丹)
      2. [その他の文献]〔孫綽‐天台山賦〕
    2. 漢詩文の二節一連のものや和歌などに曲節をつけてうたうこと。また、朗吟するための詩歌、歌曲。朗詠を集めたものに、藤原公任の「和漢朗詠集」、藤原基俊の「新撰朗詠集」などがある。
      1. [初出の実例]「請歌聖代之明時、将頌臣之朗詠」(出典:菅家文草(900頃)一・九日侍宴、同賦喜晴、応製)
      2. 「笛吹き朗詠(ラウヱイ)して、泣々心を慰けり」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)下)
  2. [ 2 ]わかんろうえいしゅう(和漢朗詠集)」の略称。
    1. [初出の実例]「月平砂をてらせば、夏の夜の霜と、此両牛の声をきき、朗詠にもつくられたり」(出典:虎明本狂言・牛馬(室町末‐近世初))

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改訂新版 世界大百科事典 「朗詠」の意味・わかりやすい解説

朗詠 (ろうえい)

雅楽の歌謡(うたいもの)の一つ。漢詩にフシをつけて朗誦し,これに笙,篳篥(ひちりき),横笛(竜笛)など雅楽の管楽器が助奏を行う。催馬楽(さいばら)に比べると拍節も定かではなく,むしろ,ゆるやかに流れるフシのみやびやかさを鑑賞すべく考案されたもののようである。宇多天皇の孫にあたる源雅信(920-993)がそのうたいぶりのスタイルを定め,一派を確立したと伝えられており,その後,雅信を流祖とする源家(げんけ)と,《和漢朗詠集》《新撰朗詠集》の撰者藤原公任,藤原基俊などの流派である藤家(とうけ)の2流により,それぞれのうたいぶりや譜本を伝えた。これらの流儀はさらにうたいものを伝える堂上公家の系統である綾小路(あやのこうじ)家持明院家などに受け継がれ,これらの家に伝わる譜本に基づいて1876年に《嘉辰》《春過》《徳是(とくはこれ)》《東岸》《池冷(いけすずし)》《暁梁王》《紅葉(こうよう)》の7曲が,さらに88年に《二星(じせい)》《新豊》《松根》《九夏》《一声》《泰山》《花十苑》の7曲が宮内庁楽部の選定曲とされ,別に《十方(じつぽう)》を加えて,現在の宮内庁楽部のレパートリーとされている。

 現行の朗詠のうたい方は,《嘉辰》を除き,漢文を訓読して,すなわち〈春過夏闌〉を,〈春すぎ,夏たけぬ〉とうたうやり方をとっている。歌詞を〈一ノ句,二ノ句,三ノ句〉という3部分に分け,さらに各句を独唱部と付所(つけどころ)(斉唱および楽器の助奏部)とに分けて演奏する。独唱部はそれぞれ別のうたい手によってうけもたれるが,各独唱部分の声域がかなり異なることから,往時は女性も加わって行われていたことも想像される。助奏の管楽器はそれぞれ1管ずつ,歌の旋律をなぞるように並行してつけていく。管絃舞楽合奏では主として和音を奏する笙も,ここでは和音は吹かず,歌の旋律音を1音あるいは2音でたどっていく。なお,朗詠は,催馬楽とともに管絃の演奏会のプログラムに組み込まれて演奏されるのを通例としている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「朗詠」の意味・わかりやすい解説

朗詠
ろうえい

雅楽の声楽種目名。謡物(うたいもの)として催馬楽(さいばら)と並んで平安時代につくられ、唐楽管絃(かんげん)で演奏される。広義の郢曲(えいきょく)にも含まれる。地方の民謡を詞章とした拍節的な催馬楽に対して、朗詠は二節一連の漢詩を用い、自由拍子で拍節はない。漢詩を一ノ句から三ノ句に分け、各句の初めを独唱、「付所(つけどころ)」の指示がある箇所からは笙(しょう)・篳篥(ひちりき)・竜笛(りゅうてき)(各一管)の付奏により斉唱で謡われる。笙は合竹(あいたけ)ではなく一本吹。

 源雅信が一定の曲節をつけたという『極楽尊』『徳是北辰(とくはこれほくしん)』などを根本七首と称す。のちに曲目が増え、藤原宗忠・忠実(ただざね)らは『朗詠九十首抄』、藤原公任(きんとう)は『和漢朗詠集』を著した。平安から鎌倉初めにかけては、神楽歌(かぐらうた)・催馬楽、やがては今様(いまよう)も含めて広く郢曲として宮廷貴族に親しまれる。歌法には源家(げんけ)と藤家(とうけ)があったが藤家は絶え、明治時代に宮内庁で演奏すべきものとして『嘉辰(かしん)』『東岸(とうがん)』『徳是(とくはこれ)』『二星(じせい)』『池冷(いけすずし)』『暁梁王(あかつきりょうおう)』『紅葉(こうよう)』『春過(はるすぎ)』『新豊(しんぽう)』『松根(しょうこん)』『九夏(きゅうか)』『一声(いっせい)』『泰山(たいざん)』『花上苑(はなじょうえん)』が撰定(せんてい)された。

[橋本曜子]

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百科事典マイペディア 「朗詠」の意味・わかりやすい解説

朗詠【ろうえい】

雅楽の一種。平安時代の貴族が,和漢の詩文に旋律をつけ歌ったもの。現在では宮内庁楽部に伝承され笙(しょう),篳篥(ひちりき),竜笛(りゅうてき)の伴奏で歌われている。催馬楽(さいばら)と違って拍節的でなく,また,一ノ句,二ノ句,三ノ句からなる一定の楽式を有する点も異なる。→和漢朗詠集
→関連項目郢曲句頭笏拍子白拍子

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「朗詠」の意味・わかりやすい解説

朗詠
ろうえい

歌謡の一種。和漢の詩文に旋律をつけ,笙 (しょう) ,篳篥 (ひちりき) ,横笛の伴奏で歌うこと。漢詩を朗吟することは古くから行われたと思われるが,平安時代中期,源雅信が菅原文時に命じて書かせた辞表の佳句を一定の節をつけて詠吟したのが狭義の朗詠の始りといわれ,これから根本朗詠7首が生れたという。これは貞元2 (977) 年にあたり,まもなく宮廷で盛んに朗詠が行われ,これをもとに『和漢朗詠集』が編纂された。その後,藤原忠実,藤原宗能によって「朗詠九十首」が選ばれ,藤家と源家の両家の譜が行われた。宮廷の節会などには必ず行われ,平安末期~鎌倉時代に盛行をきわめた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「朗詠」の解説

朗詠
ろうえい

広義の雅楽の小種目名。平安中期に成立。唐楽の吹き物を伴奏とする謡物(うたいもの)で郢曲(えいきょく)とも。詞章は通常漢文の読み下し形。漢文音読の例もある。4行の漢詩であっても,1の句から3の句にわけて,それぞれ別の句頭(くとう)が独唱した後で斉唱する。210種の詞章があったというが,現在は14種。2の句の音域が高くて困難なことから,「二の句がつげぬ」という言回しがうまれたともいう。

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普及版 字通 「朗詠」の読み・字形・画数・意味

【朗詠】ろう(らう)えい

声高く歌う。晋・孫綽〔天台山に遊ぶの賦〕思ひを幽巖(いうがん)に凝(こ)らし、長川に詠す。

字通「朗」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の朗詠の言及

【詩吟】より

…吟詠(ぎんえい),朗詠(ろうえい),朗吟(ろうぎん)などとも呼ぶが,吟者の中には,漢詩の訓読を吟じることを〈詩吟〉,琵琶歌の中の和歌や漢詩の訓読が独立したものを吟じることを〈吟詠〉,俳句・今様・新体詩・散文詩などを吟じることを〈朗詠〉と称して区別している者が多い。旋律は,日本語の詩歌を読み上げる際のイントネーションが強調されたもので,旋律の骨組みは同形でも詩の情感を吟じ分けることが吟者に要求されている。…

【日本音楽】より

…このために9世紀半ば,仁明天皇のころから約半世紀にわたって,いわゆる楽制改革が行われた。この運動の一環として,外国音楽の様式に日本の歌詞をはめこんだ催馬楽(さいばら),さらにそれが日本的になった朗詠の2種の新声楽が生まれた。また,宮中の祭祀楽も御神楽(みかぐら)として,その形態が整えられ,雅楽の中に含まれるようになった。…

※「朗詠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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