母親からの分離(読み)ははおやからのぶんり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「母親からの分離」の解説

母親からの分離
ははおやからのぶんり

人間の性・精神発達段階において,自我の分化に伴い,幼児は身近な対象としての母親にリビドーを備給し,こうして依託型対象選択をするが,その場合,幼児は母親と想像的な融合状態 (双数的関係) にある。しかし自我の確立とともに,対象を母親から他へと転換し,母親との心理的距離を取ることにより,真の自立を遂げていかなくてはならない。ところが,この母親からの分離は二重の意味で困難な課題を抱えている。一つは,母親 (女性) は,父親 (男性) が依託型対象選択にのっとった対象愛を発達させるのに対し,自己愛的傾向が強く,子を産むことによってその傾向を満たすことができるため,子供への愛は,常に愛されたいという欲望を満たすこと,つまり自己愛を満足させることに深く結び付いているという点にある。つまり母親からの分離は,母親の自己愛的愛情の在り方によって阻害されている。もう一つは,父親が代表する文化の営みは,子供の母親への愛着を禁止し (近親相姦〈そうかん〉の禁止) ,母子の分離を命じる機能を持っているが,この機能が弱い文化では,子供の母親からの分離を阻害され,このような分離不全はある悪循環をつくる (甘え) 。したがって母親からの分離による子供の自我形成の確立は,まず母親が子供と距離を取れることと,父親がその機能を果たす文化の中にあることに依存している。

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