改訂新版 世界大百科事典 「比較惑星学」の意味・わかりやすい解説
比較惑星学 (ひかくわくせいがく)
comparative planetology
太陽系内の多くの惑星,衛星の諸特徴を統一的に理解しようという学問分野。地上からの望遠鏡観測のデータに惑星探査機によるデータが加わり,急速に進歩しつつある。アプローチのしかたは,地球型惑星を観測して地球のよりよき理解を深める,あるいは太陽系の起源や生命の起源に結びつけていくなどさまざまの視点がある。いちばん古くからの議論は,観測から得られた(見かけの)質量と半径から平均密度を出し,金属鉄(密度約8),岩石(密度約3),氷(密度約1)などと比べて惑星本体のおおまかな構造をとらえようとするものであった。惑星の質量が大きく自己重力で内部物質がつぶされて密度を増加させるようになると高温高圧の物性論とも結びついていく。
マリナー4号が1964年に火星をかすめ,電波えんぺい法で火星電離層が地球のそれに比べ極端に薄いことが判明すると,それを大気組成や大気運動の差として説明しようとするいわゆる電離層論争が起こった。惑星探査機の数が増し,地球型惑星の大気の組成がほぼわかってくると,原始地球大気形成論をも巻き込みながら,どうやって惑星大気が生じたのかの議論がわき上がり,比較惑星気象論も始まった。惑星を遠く取り巻く電磁環境も木星のそれのように巨大なものから,水星の小さな磁気圏まで発見され,惑星や衛星の表面の詳細なテレビ画像からマントル対流の差異などへも議論は広がっている。
執筆者:清水 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報