日本大百科全書(ニッポニカ) 「毛益」の意味・わかりやすい解説
毛益
もうえき
生没年不詳。中国、南宋(なんそう)時代の画院画家。崑山(こんざん)(江蘇(こうそ)省)の人。孝宗の乾道年間(1165~73)に画院待詔(たいしょう)となった。彼の名はとくにわが国で名高く、室町時代の『君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)』では上の部に評価している。翎毛(れいもう)(小鳥や小動物)、花竹に巧みで、ことに渲染(せんせん)(色のぼかし)に優れ、鳥を描けば鳴き出して飛び立つばかりに真に迫っていたという。伝承作品に『萱草遊狗図(けんそうゆうくず)』『蜀葵遊描図(しょくきゆうびょうず)』双幅(奈良・大和(やまと)文華館)がある。
また12世紀の院体動物画の名品『猿図』(東京国立博物館)は毛益の父、毛松の作品と伝えている。子の毛允昇も花鳥画を描き、景定年間(1260~64)に画院待詔となっている。
[星山晋也]