気海観瀾広義(読み)きかいかんらんこうぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「気海観瀾広義」の意味・わかりやすい解説

気海観瀾広義
きかいかんらんこうぎ

物理学書。川本幸民(こうみん)が訳述し、岳父青地林宗(あおちりんそう)訳述の『気海観瀾』を増補したもの。15巻からなる。1850年(嘉永3)原稿完成、1851~1858年に5冊にまとめて刊行した。林宗は依拠した原書の「気性」の部だけを刊行したが、幸民は同一原書の1828年版を用い、イスホルジングJ. N. Isfordingの著書なども参考にして「気性」以外の内容を明らかにした。

 内容は物理学が主であるが、理学一般の総論から、力学・化学・熱学・電気学・光学などの説明がなされ、天体潮汐(ちょうせき)の理も詳述されている。巻末に図解25を掲げて理解を助け、完備した理科の書となっている。林宗の書が漢文で難解なのに比べ、本書和文をもって平易に解説しており、広く用いられてその影響が大きかった。

[片桐一男]

『狩野亨吉他監修『日本科学古典全集6 気海観瀾広義』復刻版(1978・朝日新聞社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語 朝日新聞社

世界大百科事典(旧版)内の気海観瀾広義の言及

【気海観瀾】より

…其の至微至細の極,復(また)析つ可からざるに至りて,而る後に一極微と為す〉とある。 23年後の1850年(嘉永3),川本幸民(林宗の三女秀子を妻とす)は,《気海観瀾》を増補し,漢文でなく国語(仮名交り文)で《気海観瀾広義》5編15巻を書き,51年から58年(安政5)にかけて順次出版した。〈凡例〉の冒頭に〈`ヒシカ’ハ和蘭ニコレヲ`ナチュールキュンデ’ト云ヒ。…

※「気海観瀾広義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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