日本大百科全書(ニッポニカ) 「水指」の意味・わかりやすい解説
水指
みずさし
茶席で使用する水を蓄えておく器。すなわち釜(かま)の湯を補い、茶碗(ちゃわん)、茶筅(ちゃせん)などをすすぐ水を入れておく器。水差、水注、水器ともいう。炉(ろ)、風炉(ふろ)の火と陰陽の対をなす。材質は金属、陶磁器、木竹工品の多種にわたり、器形も各時代の好みを反映して多様である。ちなみに金属には唐銅(からかね)、砂張(さはり)、毛織(もうる)、七宝(しっぽう)、南鐐(なんりょう)、鍍金(ときん)などがあり、陶磁器には高麗(こうらい)、中国、安南(あんなん)、南蛮(なんばん)、国焼(くにやき)などがある。また木竹工品には手桶(ておけ)、釣瓶(つるべ)、曲物(まげもの)などがみられる。
わび茶の流行とともに信楽(しがらき)、備前物(びぜんもの)などのいわゆる土物が使われるようになるが、それ以前の木製水指の影響か、当初は桶などの造形が多い。千利休(せんのりきゅう)(1522―91)のころから瀬戸が盛行。古田織部(おりべ)(1544―1615)の時代に至って、各地の窯へ好みものが注文されるようになる。また、千宗旦(そうたん)(1578―1658)による楽焼(らくやき)の好みもの、色絵のもの、さらに海外へ注文された形物(かたもの)水指なども現れて多彩を極める。
[筒井紘一]