色絵(読み)イロエ

デジタル大辞泉 「色絵」の意味・読み・例文・類語

いろ‐え〔‐ヱ〕【色絵】

彩色した絵。着色画。⇔墨絵
金銀などの薄い板を他の金属の彫刻した部分に焼きつける技法
本焼きした陶磁器うわぐすりの上に軟質顔料で絵や文様を彩色し、低い火度で焼きつけたもの。上絵付け。

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精選版 日本国語大辞典 「色絵」の意味・読み・例文・類語

いろ‐え‥ヱ【色絵・彩絵】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 彩色した絵。着色画。彩色画。
    1. [初出の実例]「惣金の上に色絵様々かかせられ」(出典:信長公記(1598)一五)
  3. 彫金の技法の一つ。焼付鑞を使って金銀などの薄板を他の金属にやきつける法。また、金、銀、赤銅などを象眼した色彩豊かなものもいう。
    1. [初出の実例]「烟草入は金更紗、金具は銀の彩絵(イロヱ)の都鳥」(出典:合巻・教草女房形気(1846‐68)一五)
  4. 陶磁器の上絵(うわえ)赤絵

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「色絵」の意味・わかりやすい解説

色絵
いろえ

赤絵、錦手(にしきで)、五彩(ごさい)ともいう。陶磁器の基本的な加飾法の一つで、白釉(はくゆう)陶、白磁胎の釉面に赤、黄、緑など各種の彩釉を使って上絵付けする手法。白釉陶や白磁をつくる透明釉は高火度の1250~1300℃で焼製されるため、大規模な本窯が用いられる。一方、絵の具に用いる釉彩はやはり一種の釉薬であるが、これは鉛釉を基礎にしているところから、800℃前後で調製される。したがって、本窯で精製された透明釉陶磁を再度、錦窯(きんがま)とよばれる小規模な窯に入れて低火度の酸化炎で各種の釉彩を焼き付けると、素地(きじ)をつくる透明釉はまだわずかに溶ける段階にあり、ここで上絵の具は良好に呈色して釉面としっくり溶け合うことになる。この釉彩は赤と他の色(黄、緑、紺、黒など)とに大別され、調整が異なる。いずれも鉛釉の基礎をなすのは白玉フリット)とよばれる鉛釉の玉であり、この白玉に硫酸鉄(緑礬(りょくばん))を焼いてさらしたものと混合して赤絵の具をつくり、色絵陶磁は華やかなこの赤絵の具が活躍するために、江戸時代の初期から赤絵という色絵の総称語がつくられたほどであった。他の釉彩は白玉のほかに酸化鉛(鉛白(えんぱく))やケイ酸(日の岡(ひのおか))を加え、呈色剤に硫酸鉄、酸化銅、その他を使って各種の色釉をつくる。すなわち長石質の高火度釉の上に、鉛釉の低火度釉を上のせしたのが色絵の原理であり、この2種の釉(うわぐすり)こそまさに東洋陶磁器を形成する二大釉であったところから、世界に先駆けて東洋で色絵陶磁が焼かれ始めるのは当然のことであった。

 世界で最初に色絵を考案したのは中国華北の磁州窯(じしゅうよう)であり、12世紀末の金(きん)時代であった。初めは白釉陶が基礎となっていたが、14世紀元時代後半には景徳鎮窯(けいとくちんよう)で白磁胎の色絵、中国流にいって五彩がつくりあげられ、明清(みんしん)陶磁の寵児(ちょうじ)となった。日本では江戸前期の1640年(寛永17)ごろに九州有田の酒井田柿右衛門(かきえもん)が中国人に学んで開発した。ペルシアでは13世紀ごろおそらく独自に色絵がくふうされて、いわゆるミナイ手がつくられている。西欧では日本の伊万里焼(いまりやき)に刺激を受けて、1720年代に色絵磁器の創成がドイツのマイセン窯で進められた。

[矢部良明]


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改訂新版 世界大百科事典 「色絵」の意味・わかりやすい解説

色絵 (いろえ)

陶磁器の装飾技法の一つ。五彩,赤絵,錦手,染錦手,十錦手などを総括していう。基本的には白磁,白釉陶,白化粧地透明釉陶などを素地として,特殊な絵具で文様を上絵付し,低火度で焼き付ける。この技法は世界に流布しているが,創始は中国金代12世紀末と推定される。14世紀にはペルシアのミナイ手が案出され,日本では17世紀に有田焼と京焼で始まり,18世紀以降ヨーロッパにも広まった。
赤絵
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「色絵」の解説

色絵
いろえ

陶磁器の加飾法の一つで,透明釉のかかった陶磁器の釉面に,各種の絵具を使って文様を焼きつける技法。昭和期に入ってからの造語で,江戸時代以来,伊万里焼では赤絵,京都では錦手(にしきで)とよんだ。あらかじめ高火度で透明釉のかかった無地陶磁器を本焼きしておき,特別の絵具で絵付して,低火度の錦釜(きんがま)で焼きつける。たとえば伊万里焼では,赤は酸化鉄の粉末と鉛ガラスを混ぜて作り,緑・黄・紫などは鉛釉を基本に,銅・鉄・マンガンなどで呈色した釉を上絵具に利用。その華やかな効果は,江戸時代以来の赤絵の名称よりも本質をいいあてているため,第2次大戦後,色絵の称が普及した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「色絵」の意味・わかりやすい解説

色絵
いろえ

金工用語,陶磁用語。金工では,刀剣の装飾金具などで,色彩の異なる数種の金属を組合せて象眼文様をつくることをいう。陶磁器では,器物の表面に赤,緑,黄などの彩釉を用いて上絵付けをしたものをさす。

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世界大百科事典(旧版)内の色絵の言及

【赤絵】より

…陶磁器をおおうガラス状の被膜,釉(うわぐすり)の上に赤や緑,黄,紫,藍などガラス質の色釉(いろぐすり)で文様を施したもの。赤を主調とするところから日本でとくに赤絵と総称され,また色絵とも呼ばれ,中国では五彩と呼んでいる。また釉の上に着彩されるところから上絵(うわえ)とか上絵付とも呼ばれる。…

【江戸時代美術】より

…続く天和年間(1681‐84)の奢侈(しやし)禁止令を契機として,それまでの繡(ぬい)と絞(しぼり)による染織技法に代わり,模様染が普及しはじめた。 また,陶磁器では,江戸初期に大量に輸入された中国陶磁の刺激による色絵磁器の技法の開発が特記される。1640年代になって酒井田柿右衛門が赤絵磁器の技法を工夫し,これを契機に有田(伊万里),古九谷,鍋島などすぐれた色絵・染付磁器が各地で焼かれ,野々村仁清による色絵陶器と相まって日本陶磁史上の一つの頂点を形成した。…

【錦手】より

…白磁や白い陶胎の釉上に赤,黄,緑,紫,青,黒などの色釉(いろぐすり)や金,銀彩で上絵付(うわえつけ)した陶磁器の日本での総称。日本では単に赤絵,色絵ともいい,中国では五彩(ごさい)とも呼ぶ。江戸時代の初期に中国から輸入された,明末の嘉靖の五彩磁,金襴手(きんらんで),万暦赤絵や,清初の南京赤絵,色絵祥瑞(しよんずい)などの影響を受け,肥前有田では磁胎の錦手が,京都では陶胎の錦手が始められた(有田焼)。…

※「色絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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