中国人の世界観を規定するもっとも基本的なカテゴリー。〈気〉の二側面をあらわし,陰の気は静,重,柔,冷,暗,陽の気は動,軽,剛,熱,明などをその属性とする。両者の交合によって万物が生まれ,その消長によって四季が形成される。両者は対立する二元であるが敵対するものではなく,太極(たいきよく)または道と呼ばれるものによって統合されており,たがいに引きあい補いあう。また,一方が進むと一方が退き,一方の動きが極点にまで達すると他の一方に位置をゆずって,循環と交代を無限にくりかえす。中国人が事物を認識する際,対(つい)でとらえる傾向があるのもこの陰陽論に由来しており,文学表現における対句,建築などにおけるシンメトリーの愛好も陰陽論と切りはなすことができない。
→陰陽五行説
執筆者:三浦 国雄
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…中国思想において,陰陽論と五行説とを組みあわせ,宇宙の生成,自然のめぐり,統治のあり方,人体のしくみなど,宇宙から人事にいたるあらゆる現象を説明するのに用いられた理論。さまざまな占いにも応用された。…
…前漢の初期には,秦の弾圧政策の反動として,自由放任の政治を説く道家思想が流行したが,やがて武帝の代になって儒学が官学として採用され,以後2000年にわたる儒教支配の基礎を固めることになった。漢代儒学の特色の一つは,陰陽五行説を取り入れたことにある。陰陽説とは万物が陽気と陰気の2要素から成ると説くもので,その典型的な例は《易経》に見られる。…
※「陰陽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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