水離れ(読み)ミズバナレ

デジタル大辞泉 「水離れ」の意味・読み・例文・類語

みず‐ばなれ〔みづ‐〕【水離れ/水放れ】

暖められて水が冷たくなくなること。
ようやく―のした茶釜の湯を」〈長塚
水面から離れること。また、水中から取り出すこと。
「総じて鯉は―が大事ぢゃと申すに依って」〈虎寛狂・鱸庖丁
親子夫婦などが離れ離れになること。
「つれなき―、立っても居てもあられねば」〈浄・八百屋お七
大坂堂島の米市で、大引けの前に仲買人が立ち去ること。
「早や追ひ立てる―」〈浄・盟約大石〉

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精選版 日本国語大辞典 「水離れ」の意味・読み・例文・類語

みず‐ばなれみづ‥【水離・水放】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 水面から離れること。水中から引き上げること。
    1. [初出の実例]「惣て鯉は水放れが大事じゃと申に依て」(出典:虎寛本狂言・鱸庖丁(室町末‐近世初))
  3. 密着していた物が水けのために離れること。水で物をはがすこと。
  4. 親元を離れること。夫婦が別れること。また、一般に、別れることにもいう。
    1. [初出の実例]「かたぢの父の親の手を、水ばなれせぬお亀とは」(出典:浄瑠璃・卯月の紅葉(1706頃)上)
  5. 食欲がないこと。
    1. [初出の実例]「ちからない・去るはさったが水ばなれ」(出典:雑俳・軽口頓作(1709))
  6. 暖められて、水がつめたくなくなること。ぬるま湯の状態になること。
    1. [初出の実例]「漸く水離れのした茶釜の湯を」(出典:土(1910)〈長塚節〉一)
  7. 大坂堂島の米市で、大引(おおび)け直前に水をまくのを合図に仲買人が立ち去ること。
    1. [初出の実例]「帳合正米内証とら市、〈略〉金は石砂水番か、早追立る水放れ」(出典:浄瑠璃・忠義墳盟約大石(1797)八)

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