朝日日本歴史人物事典 「江馬蘭斎」の解説
江馬蘭斎
生年:延享4.9.27(1747.10.30)
江戸後期の蘭方医。美濃国(岐阜県)大垣藩医。女性漢詩人江馬細香の実父。名は元恭,通称は春齢(2代),号は好蘭斎,蘭斎。版木師鷲見荘蔵の子。はじめ大垣藩家老和田氏の臣,のちに藩医に抜擢された江馬元澄(初代春齢)の養子となる。細香稿本の『蘭化先生伝』に,47歳で蘭学を学ぶため前野良沢 に就いたとき,良沢も同年齢で勉学したことをいって激励したとある。寛政期(1789~1801)の江戸での蘭学者番付では東方前頭4枚目,寛政6(1794)年大槻玄沢主宰の宴を描いた「芝蘭堂新元会図」に賛がある。寛政10年に西本願寺法主を治療して医名を揚げ患者も激増した。他方,小森桃塢,藤林普山以下,弟子教育の特色は,オランダ語教授法に大槻玄沢的熟読暗誦主義ではなく,文法重視を採用した点にある。著訳に『江波医事問答』(1814),『五液診法』(1816),『泰西熱病集訳』(1817),『家訓十二箇条』(1805)などがある。<参考文献>青木一郎『大垣藩医江馬蘭斎』,江馬文書研究会編『江馬家来簡集』
(岩崎鐵志)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報