日本大百科全書(ニッポニカ) 「法における常識」の意味・わかりやすい解説
法における常識
ほうにおけるじょうしき
Common Sense in Law
イギリスの著名な法学者ビノグラドフの著作。1913年の出版以来増刷を重ね、日本でも翻訳され、リプリントもされている。著者は、人々の行為を規律している流行、風習・慣行、慣例的基準、道徳律などの社会規範から説き起こし、道徳規範と法規範の関係、両者の区別の仕方などを論じている。そのうえで、法的権利と法的義務、法律事実と法律行為、立法、慣習、判決例、衡平、および自然法について、イギリス法をはじめ、アメリカ法、ヨーロッパ諸国の法を素材に、簡にして要を得た説明をしている。碩学(せきがく)が一般読者のために法の本質を平易に解説した法学入門書と評することができる。
[堀部政男]
『末延三次・伊藤正己訳『法における常識』(岩波文庫)』