泣落(読み)なきおとし

精選版 日本国語大辞典 「泣落」の意味・読み・例文・類語

なき‐おとし【泣落】

〘名〙
① 泣いたり、涙を流したりして相手同情を買い、それにすがってこちらの願いをきき入れてもらうこと。なきごかし。
椀久物語(1899)〈幸田露伴〉六「人には見せぬ機関(からくり)を胸に装置(しかけ)た御傾城様、人を謀らう泣き落し、涙を使ふ軍師の御手際」
② 泣き伏すこと。多く歌舞伎ト書に用いられる語。
滑稽本浮世床(1813‐23)二「南無阿彌陀仏を泣下(ナキオト)しにして、坐を退く世話女房あれば」
義太夫節で、三味線に乗って泣きくずれること。浄瑠璃の大落としにあたり、後には浪花節にも導入された。
※社会観察万年筆(1914)〈松崎天民〉浪花節の盛衰「浪花節の人心を動かす所は、愁ひ、泣落(ナキオト)し」

なき‐おと・す【泣落】

[1] 〘自サ四〙 泣き伏す。泣きしずむ。泣き入る。歌舞伎のト書で用いる語。
※歌舞伎・五大力恋緘(1793)三幕「『この様な悲しい事が有らうかいなア』ト泣落(ナキオト)す」
[2] 〘他サ五(四)〙 泣いたり、涙を流したりしながら哀れっぽい言動をすることによって、相手の同情をひくようにして自分の願いを相手に承知させる。
※蝮のすゑ(1947)〈武田泰淳〉一「日僑管理処の役人を泣き落すやうな文句をえらび」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android