消化管狭窄に対する治療

内科学 第10版 「消化管狭窄に対する治療」の解説

消化管狭窄に対する治療(内視鏡的インターベンション)

(3)消化管狭窄に対する治療
 消化管に狭窄がある場合には,その原因や程度に応じて治療法が選択される.炎症後の瘢痕形成がおもな成因である消化管の良性狭窄では,おもにバルーンや硬性ブジーによる拡張術が行われる.良性の胆道狭窄の場合には,バルーン拡張後に抜去可能なステントを留置して再狭窄を予防することが多い.一方,悪性腫瘍による狭窄に関しては,狭窄が進行性であり一度拡張しても再度狭窄を生ずるため,通常はステント留置術が行われる.いずれの場合も,狭窄の程度や長さ,管腔の曲がり具合などを事前に確認しておき,穿孔などの偶発症を起こさぬよう慎重に処置しなければならない.
a.バルーン拡張術
 あらかじめ内視鏡的にガイドワイヤーを留置してから,X線透視下にバルーンダイレーターを挿入するものと,内視鏡の鉗子口から直接バルーンダイレーターを挿入するものとがある.バルーンダイレーターに圧計測器をセットし,内腔を蒸留水または水溶性造影剤を加えた蒸留水で満たし,透視下でバルーンの位置を確認しながら拡張を行う.狭窄部に亀裂が入ることにより広がるが,裂けた粘膜が治る際に再狭窄をきたす場合が多いため,通常は複数回の治療を要する.食道では食道アカラシア,内視鏡治療後の狭窄,術後の吻合部狭窄,胃では消化性潰瘍などによる幽門狭窄,広範なESDによる噴門部や幽門部の狭窄,下部消化管ではCrohn病や潰瘍性大腸炎などによる腸管狭窄などが治療の対象となる.
b.ステント留置
 以前は,プラスチックステントやバルーンで拡張するメタリックステントが用いられていたが,1990年代に自己拡張型のselfexpandable metallic stent(SEMS)が登場してからは,SEMSが主流となってきた.SEMSは細径のシースを用いて大口径のステントを留置できるため,患者の身体的負担が少なく,高度な狭窄にも適応できる利点がある.またメタリックステントの場合,腫瘍がメッシュ状のステント内に発育してきて,再狭窄を起こしやすいという問題点があったが,最近はこのステント内増殖を防止するため,シリコン製のシートでカバーしたものも開発されている.ステント留置は,嚥下困難を伴う進行食道癌や,胃癌や十二指腸癌,膵癌に伴う幽門部や十二指腸の狭窄,膵頭部癌胆管癌に伴う胆道狭窄などが適応となる.[矢作直久]
■文献
日本胃癌学会編:胃癌治療ガイドライン(医師用),2010年10月改訂第3版,金原出版,東京,2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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