溶脱層(読み)ようだつそう(その他表記)eluvial horizon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「溶脱層」の意味・わかりやすい解説

溶脱層
ようだつそう
eluvial horizon

土壌の垂直断面にみられる特徴的な層(正しくは層位)の一つで、溶脱層位ともいう。一般に表層付近にあり、下部に続く集積層(位)と対(つい)になって発現する。土層を浸透する雨水が可溶性の無機成分を溶解して下層に流したり、微細な土壌粒子を土層内のすきまを通して流下させる作用により、長期間に表層から種々の物質が失われる。この傾向が強い部分を溶脱層とよび、A層と略称することがある。温帯多雨気候下ではカリウムナトリウムカルシウムなどの塩基類が溶脱層から失われ、同時にこの部分には腐植の生成がおこるため表土は暗色になる。塩基の溶脱によって表土は酸性化するが、とくにポドゾルの発達する寒冷多湿の樹林下では、強酸性腐植の生成のため鉄・アルミニウムのケイ酸塩が分解され、溶脱層の下半部は粘土に乏しい砂質の漂白層となる。これをポドゾルのE層(Ae層と称することもある)とよぶ。

[浅海重夫・渡邊眞紀子]

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岩石学辞典 「溶脱層」の解説

溶脱層

成熟した土壌断面の最上部帯である.ここから水に溶けやすい物質が溶脱し,あるいは水に分散されやすい物質が下方に移動して除去された結果生じた層[Glinka : 1914, Robinson : 1924].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の溶脱層の言及

【土壌】より

…降雨・灌漑によって水が土壌中を下降するとき,土壌中の物質を溶解しこれを下層に移動させるが,この過程を物質の溶脱という。湿潤気候下ではA層はこの溶脱作用を強く受けていることが多く,溶脱層とも呼ばれている。乾燥気候下では土壌表面における蒸発量が降雨量より大きくて地下から地表への水の上昇傾向が強く,地下の塩類が水の上昇に伴い表層に持ち上げられ,A層が塩類土壌化する場合が多い。…

※「溶脱層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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