日本大百科全書(ニッポニカ) 「溶脱層」の意味・わかりやすい解説
溶脱層
ようだつそう
eluvial horizon
土壌の垂直断面にみられる特徴的な層(正しくは層位)の一つで、溶脱層位ともいう。一般に表層付近にあり、下部に続く集積層(位)と対(つい)になって発現する。土層を浸透する雨水が可溶性の無機成分を溶解して下層に流したり、微細な土壌粒子を土層内のすきまを通して流下させる作用により、長期間に表層から種々の物質が失われる。この傾向が強い部分を溶脱層とよび、A層と略称することがある。温帯多雨気候下ではカリウム、ナトリウム、カルシウムなどの塩基類が溶脱層から失われ、同時にこの部分には腐植の生成がおこるため表土は暗色になる。塩基の溶脱によって表土は酸性化するが、とくにポドゾルの発達する寒冷多湿の樹林下では、強酸性腐植の生成のため鉄・アルミニウムのケイ酸塩が分解され、溶脱層の下半部は粘土に乏しい砂質の漂白層となる。これをポドゾルのE層(Ae層と称することもある)とよぶ。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]