ポドゾル(読み)ぽどぞる(英語表記)podzol

翻訳|podzol

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポドゾル」の意味・わかりやすい解説

ポドゾル
ぽどぞる
podzol

気候と植生の条件で分布が決まるいわゆる成帯性土壌の一種で、断面形態の特徴について、またその成因論的解釈の面で、もっともよく研究されてきた型の土壌である。灰白土ともいう。断面形態はO、A、E、B1、B2、Cの層位に分けられ、B2層までの深さは50~70センチメートルくらい、O層(A0と表記することもある)はOi(L)、Oe(F)、Oa(H)の3枚に細分できる。この土壌が発達している所は針葉樹林相で、未分解の落葉累積層や発酵分解の始まった層、無機質土粒と混在した粗腐植層(以上がO層)の下に腐植層Aがある。十分に発達したポドゾルほどこのA層は薄く、その下部は強酸性腐植物質(フルボ酸)の浸潤によって無機母材中の塩基類が溶解され、ケイ酸分のみが残留した灰白色砂質の漂白層(E層)となる。次層はA層から流下した腐植の集積および流下塩基類のうちの沈殿物(鉄とアルミニウムの三二酸化物)からなるB層(集積層)で、腐植を主とした暗褐色の部分B1と鉄の集積を主とした赤褐色の部分B2(Bhと表記することもある)とに細分される。土壌生成作用のタイプとしてこのような強酸性腐植の溶脱作用が支配的なプロセスをポドゾル化作用(過程)とよび、土層を下降する洗脱型の水分の作用が強いか弱いかによって、ポドゾル性の程度に違いが生まれる。

 日本には完全に成熟したポドゾルは現存しないが、北海道・東北地方の丘陵性低山地や海岸の固定砂丘にポドゾル性土はみられ、中部山岳地帯の山稜(さんりょう)山腹平坦(へいたん)部にも発見される。灰色(はいいろ)・灰褐(はいかっ)色森林土と命名される土壌にもポドゾル化傾向をみせるものがあり、それらは灰色・灰褐色ポドゾル性土と名づけられた土壌である。世界的な視野ではシベリア、カナダのタイガ地方をはじめ北欧アラスカなどに広いポドゾル分布域がある。しかし、熱帯・温帯地方にもポドゾルやポドゾル性土がみいだされることがある。それらの生成については、局地的微地形条件や地質母材条件(浸透水の量が多い砂質母材、花崗(かこう)岩などの酸性岩の分布地域など)によるものと考えられる。

[浅海重夫・渡邊眞紀子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポドゾル」の意味・わかりやすい解説

ポドゾル
podsol

成帯土壌の一種。シベリアやカナダのタイガなどの寒冷多湿の針葉樹林帯に分布する。針葉樹の供給する酸性腐植によって塩基類が強い溶脱を受け,表層から下層へ粘土分とともに流下し,下層にその一部が集積している。特に地表下の漂白層では著しい漂白作用が働き,流下しにくい砂分だけが残留して灰白色の特徴層位を形成する。ロシア語でこの灰白色層をポドゾル (白い土) と呼んだ。強酸性を示し,農業生産力の低い土壌。日本には低地では北海道の北岸部などにみられるほか,わずかに高地の小起伏面に断片的に見出される。明瞭な漂白層を伴わないがケイ酸と鉄,アルミニウムの断面内移動の特徴からポドゾル性土壌と判定されるものは,温帯地方にもあり,灰褐色ポドゾル性土,褐色ポドゾル性土などと呼ばれる。

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