ポドゾル(英語表記)podzol

翻訳|podzol

デジタル大辞泉 「ポドゾル」の意味・読み・例文・類語

ポドゾル(podzol)

《灰色の土の意》冷帯針葉樹林下に発達する土壌表層は酸性腐植の浸潤により塩基・鉄・アルミニウムを失って灰白色の漂白層となり、下層はこれらの物質が沈殿して褐色の緻密ちみつ集積層となる。シベリアアラスカなどに分布し、日本でも北海道にみられる。灰白土

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精選版 日本国語大辞典 「ポドゾル」の意味・読み・例文・類語

ポドゾル

  1. 〘 名詞 〙 ( [ロシア語] podzol 灰白の土の意 ) タイガ地帯に広く分布する酸性のやせた土壌。表面は腐植層で、その下に浸透水によって漂白された灰白色の層、その下には鉄・腐植などの集積した暗赤色の緻密な層がある。〔産業と気象(1950)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「ポドゾル」の意味・わかりやすい解説

ポドゾル
podzol

湿潤寒冷気候帯の北方針葉樹林(タイガ)下に典型的に発達する土壌。灰白土ともいわれ,またアメリカ合衆国の新分類体系ではスポドソルSpodosolsと呼ばれている。ポドゾルという名称は,この土壌が堆積腐植層の下に特有な灰色の土層をもつことにちなんで,ロシア語の〈下〉と〈灰〉を意味することばからつくられたものである。湿潤寒冷気候下では,地中動物や細菌の活動が不活発なため,地表に堆積した動植物遺体は完全に分解されず,厚い堆積腐植層(A0層)が形成される。この堆積腐植層は真菌類や糸状菌によってゆっくりと分解されるが,その際にフルボ酸と呼ばれる強酸性の有機酸が生成する。フルボ酸はケイ酸塩鉱物を激しく分解して,アルカリ元素やアルカリ土類元素を溶脱するとともに,鉄やアルミニウムと可溶性の有機金属錯体またはキレート化合物を形成して,下層に移動集積する。その結果A0層の下にケイ素に富んだ灰白色の漂白層(A2層)が形成されると同時に,さらにその下方に暗い鉄さび色を呈する鉄,アルミナの集積層(Bs層)または腐植の集積層(Bh層)が顕著に発達する。このような過程を〈ポドゾル化作用〉といい,一般に多少ともポドゾル化作用を受けている土壌を〈ポドゾル性土〉と呼ぶ場合が多いが,ソ連の分類体系ではA0層の直下にA2層があるものをポドゾルと呼び,A0層とA2層の間に腐植と無機質母材がよく混合されたA1層が存在するものをジョールン・ポドゾル性土として区別し,両者をまとめてポドゾル性土と呼んでいる。ポドゾルは強酸性反応を示し,養分が極度に欠乏しているため,肥沃度はきわめて低い。ユーラシア大陸では北極圏以南から北緯50°付近まで,北アメリカ大陸ではやや南下して五大湖付近に至る周極地帯に広く分布している。日本では北海道北部および本州,四国,九州の亜高山帯にみられる。ヨーロッパのヒースハイデ植生ニュージーランドのカウリ林,日本のヒバ林やコウヤマキ林などの特殊な植生の影響を受ける場合や,強度の乾燥を伴う熱帯の特殊な条件下では,温帯,亜熱帯,熱帯でもポドゾルが生成する場合がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポドゾル」の意味・わかりやすい解説

ポドゾル
ぽどぞる
podzol

気候と植生の条件で分布が決まるいわゆる成帯性土壌の一種で、断面形態の特徴について、またその成因論的解釈の面で、もっともよく研究されてきた型の土壌である。灰白土ともいう。断面形態はO、A、E、B1、B2、Cの層位に分けられ、B2層までの深さは50~70センチメートルくらい、O層(A0と表記することもある)はOi(L)、Oe(F)、Oa(H)の3枚に細分できる。この土壌が発達している所は針葉樹林相で、未分解の落葉累積層や発酵分解の始まった層、無機質土粒と混在した粗腐植層(以上がO層)の下に腐植層Aがある。十分に発達したポドゾルほどこのA層は薄く、その下部は強酸性腐植物質(フルボ酸)の浸潤によって無機母材中の塩基類が溶解され、ケイ酸分のみが残留した灰白色砂質の漂白層(E層)となる。次層はA層から流下した腐植の集積および流下塩基類のうちの沈殿物(鉄とアルミニウムの三二酸化物)からなるB層(集積層)で、腐植を主とした暗褐色の部分B1と鉄の集積を主とした赤褐色の部分B2(Bhと表記することもある)とに細分される。土壌生成作用のタイプとしてこのような強酸性腐植の溶脱作用が支配的なプロセスをポドゾル化作用(過程)とよび、土層を下降する洗脱型の水分の作用が強いか弱いかによって、ポドゾル性の程度に違いが生まれる。

 日本には完全に成熟したポドゾルは現存しないが、北海道・東北地方の丘陵性低山地や海岸の固定砂丘にポドゾル性土はみられ、中部山岳地帯の山稜(さんりょう)山腹の平坦(へいたん)部にも発見される。灰色(はいいろ)・灰褐(はいかっ)色森林土と命名される土壌にもポドゾル化傾向をみせるものがあり、それらは灰色・灰褐色ポドゾル性土と名づけられた土壌である。世界的な視野ではシベリア、カナダのタイガ地方をはじめ北欧、アラスカなどに広いポドゾル分布域がある。しかし、熱帯・温帯地方にもポドゾルやポドゾル性土がみいだされることがある。それらの生成については、局地的微地形条件や地質母材条件(浸透水の量が多い砂質母材、花崗(かこう)岩などの酸性岩の分布地域など)によるものと考えられる。

[浅海重夫・渡邊眞紀子]

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百科事典マイペディア 「ポドゾル」の意味・わかりやすい解説

ポドゾル

湿潤冷温帯の針葉樹林(タイガなど)の下に典型的に発達する土壌型。腐食生物の活動が不活発なために分解不完全な堆積腐植層(粗腐植層)が厚く形成され,これが真菌類や糸状菌によって徐々に分解されてフルボ酸が生成する。この酸のため,表土直下の土層中の塩基,鉄,アルミニウムなどが溶解洗脱されて特有の灰白色の漂白層を形成し,その下位にこれらの物質が酸化沈殿した褐色,緻密(ちみつ)な集積層が分化しているのが特徴。強酸性で,養分が欠乏するため,地味はきわめて悪い。ロシアでは,上記のような土壌型をポドゾル性土,その中でポドゾル化の強い土壌種をポドゾルと呼ぶ。日本では低地では北海道北部に発達の弱いポドゾル性土がみられるほか,本州以西でも,一般に高山のハイマツ帯および針葉樹林帯にしばしば発達する。
→関連項目タイガフィンランド

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岩石学辞典 「ポドゾル」の解説

ポドゾル

低温で湿潤な地域に特徴的な成帯土壌.森林伐採の行われた地域の,針葉樹または落葉樹の下あるいは荒野の潅木(heath)の下に形成される.分解した植物のキレート作用がポドゾルの形成される最初の要因と信じられている.ポドゾル化作用を受けた代表的な土壌断面は,O層位(原料のままの腐植層),A層位(灰色の漂白された層準で,腐植,粘土,三二酸化物が乏しい層位),B層位(錆色または黄色の帯で鉄やアルミニウムの三二酸化物に富み,硬盤(hardpan)の層が存在する),C層位(風化した母岩)である.風化したポドゾルが最も発達したものは砂質で塩基に乏しい物質となる.塩基の少ない母材から典型的に発達し,土壌は塩基が溶脱して酸性が強く,無構造のため自然的肥沃度が低い.熱帯地域でもポドゾルが見られ,マダガスカルでは羊歯類の薮の下に形成されている[Glinka : 1914, Gerasimov & Glazovskaya : 1965, 木村ほか : 1973].ロシア語のpodzolは灰土,灰色の土の意味.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポドゾル」の意味・わかりやすい解説

ポドゾル
podsol

成帯土壌の一種。シベリアやカナダのタイガなどの寒冷多湿の針葉樹林帯に分布する。針葉樹の供給する酸性腐植によって塩基類が強い溶脱を受け,表層から下層へ粘土分とともに流下し,下層にその一部が集積している。特に地表下の漂白層では著しい漂白作用が働き,流下しにくい砂分だけが残留して灰白色の特徴層位を形成する。ロシア語でこの灰白色層をポドゾル (白い土) と呼んだ。強酸性を示し,農業生産力の低い土壌。日本には低地では北海道の北岸部などにみられるほか,わずかに高地の小起伏面に断片的に見出される。明瞭な漂白層を伴わないがケイ酸と鉄,アルミニウムの断面内移動の特徴からポドゾル性土壌と判定されるものは,温帯地方にもあり,灰褐色ポドゾル性土,褐色ポドゾル性土などと呼ばれる。

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世界大百科事典(旧版)内のポドゾルの言及

【森林土壌】より

…気候の乾湿,寒暖は森林の形成,その種類ならびに森林土壌の特徴をも決定するほどの大きな影響力をもつ。日本の森林土壌のおもな種類は北海道のエゾマツ,トドマツ林下や本州高山地のハイマツ林下のポドゾル,ブナ林下の褐色森林土,シイ林下の黄褐色土,タブ林下の赤色土などである。このうち褐色森林土は日本の森林土壌の大部分を占め,乾湿の差により乾性褐色森林土,湿性褐色森林土などに細分されている。…

【土壌型】より

…またツンドラ・グライ土では凍結と融解による土層のかくらん現象(クリオタベーションcryoturbation)が活発なため泥炭の集積はあまり生じない。(2)亜寒帯針葉樹林帯の土壌型 湿潤寒冷気候帯の北方針葉樹林(タイガ)に典型的に発達している土壌型はポドゾルである。ポドゾルの分布域の南部では,針葉樹林に広葉樹が混合し,下草が繁茂するようになるが,このようなところにはジョールン・ポドゾル性土が生成されている。…

※「ポドゾル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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