滾・沸(読み)たぎる

精選版 日本国語大辞典 「滾・沸」の意味・読み・例文・類語

たぎ・る【滾・沸】

[1] 〘自ラ五(四)〙 (「たぎつ」と同語源)
① 川の水などが勢い激しく流れる。さかまく。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「わきいづる涙の川はたぎりつつ恋ひしぬべくもおぼほゆるかな」
② 湯などが煮えたつ。沸騰してわきかえる。
※大智度論平安初期点(850頃か)一六「或は沸(タキレ)る灰の中に着く」
大和(947‐957頃)一四九「この水、あつ湯にたぎりぬれば」
③ 怒り・悲しみ・焦慮などの感情が激しくわきあがる。また、心がわきたつ。
バレト写本(1591)「ヒトノ ゼンシン taguiri(タギリ) タマエバ」
日葡辞書(1603‐04)「ココロノ taguiru(タギル)
④ 他よりもすぐれる。
咄本・御伽噺(1773)噺の種「ハア出来合にはどふでもたぎった物はござりませぬが」
[2] 〘自ラ下二〙 (一)に同じ。
古今六帖(976‐987頃)三「うちたえて落つる涙になるたきのたきれて人を見ぬがわびしき」

たぎり【滾・沸】

〘名〙 (動詞「たぎる(滾)」の連用形名詞化)
① 川の水が激しく流れ、さかまくこと。
温泉(1930)〈梶井基次郎〉「明るい日光の下で白く白く高まってゐる瀬のたぎりが眼の高さに見えた」
② 湯が煮えたつこと。また、その湯。
浮世草子・武道張合大鑑(1709)四「不動釜のたぎりしづかに」
③ 湯の煮えたつ音をよくするために釜の中の底の部分につけるへた状のもの。
④ 湯が煮えたつように感情が激しくたかぶること。
※小林多喜二問題(1947)〈小田切秀雄〉一「作者の燃えるような憎悪のたぎりが」

たぎら・す【滾・沸】

〘他サ五(四)〙 たぎるようにする。煮えたたせる。たぎらかす。
広益国産考(1859)五「火を入るるとは鍋にいれたぎらし、涼(さま)して樽杯に入れ貯ふべし」

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