潜在期(読み)せんざいき(英語表記)latency period

日本大百科全書(ニッポニカ) 「潜在期」の意味・わかりやすい解説

潜在期
せんざいき
latency period

フロイトの精神分析の性心理的発達の第4段階で、およそ6歳から12歳に至る学童期がこれにあたる。幼児の性心理的発達は男根期(エディプス期)で頂点に達するが、この時期が終わると性衝動は顕著な現れ方をしなくなるので、潜在期とよばれる。しかし、これは、性衝動が衰退するからではなく、幼児期から学童期に移り、社会化し、自我が発達してくるにつれて男根期的な性衝動に対抗して、それを制止抑圧する防衛手段が発達するためであると考えられる。また性衝動は昇華され、社会的に基本的な行動様式が身につくだけでなく、知的にも顕著な発達をする。他方、抑圧されたものは無意識において自由に活動することができるので、この時期は思春期に至る性的成熟への準備段階でもある。

[外林大作・川幡政道]

『ジークムント・フロイト著、中山元編訳『エロス論集』(ちくま学芸文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「潜在期」の意味・わかりやすい解説

潜在期
せんざいき
latency period

小児性欲の衰退期 (5,6歳) から思春期の開始期に至るまでの期間で,性欲の発達の停止期に当たる。この期間には,対象関係と感情の非性愛化 (特にやさしさの性欲に対する優勢) ,羞恥 (しゅうち) 心や嫌悪のような感情の出現,道徳的および芸術的関心の出現に見られるような性活動の低下が見られる。精神分析理論によれば,潜在期の起源エディプスコンプレクスの衰退にあるとされている。それは抑圧の強化 (その結果として幼年期を覆う健忘症がもたらされる) や,対象投資 (備給) が両親との同一化に変ること,そして昇華作用の発達などに応じている。

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