国指定史跡ガイド 「瀬田丘陵生産遺跡群」の解説
せたきゅうりょうせいさんいせきぐん【瀬田丘陵生産遺跡群】
滋賀県草津市野路町、大津市一里山・瀬田大萱町にある生産遺跡群。琵琶湖東南部の瀬田地区南部から草津にかけて広がる瀬田丘陵とその周辺地域に位置する、古代の製鉄や製陶にかかわる遺跡群。1985年(昭和60)に国の史跡に指定されていた草津市の野路小野山(のじおのやま)製鉄遺跡に、4基の須恵器窯(すえきがま)と工房、灰原(はいばら)が発掘された山ノ神遺跡と4基の精錬炉が発掘された源内峠(げんないとうげ)遺跡を加え、2006年(平成18)に名称を改めた。源内峠遺跡は、出土した土器の年代から大津宮時代に生産の中心だった遺跡であることがわかっており、大津宮の造営やこれに続く藤原京、平城京の造営と密接な関係があると考えられる。瀬田丘陵に多数の生産遺跡が造られたのは、丘陵付近に鉄鉱石の鉱床があり、さらに製鉄に不可欠な燃料である森林資源も豊富だったこと、瀬田川を使った水運によって製品を中央に運ぶことができたという立地上の特性がある。大津宮時代から奈良時代にかけての生産活動のあり方を具体的に示すとともに、古代国家を支えた生産遺跡として貴重である。JR東海道本線瀬田駅から帝産湖南交通バス「文化ゾーン前」下車、徒歩約10分。