改訂新版 世界大百科事典 「炭酸エステル」の意味・わかりやすい解説
炭酸エステル (たんさんエステル)
carbonic acid ester
二塩基酸である炭酸CO(OH)2の2個の水素原子のうち,一つあるいは二つを炭化水素基で置換した化合物の総称。一つだけ置換したモノエステルRO-CO-OHは非常に不安定で,容易にアルコールと二酸化炭素に分解するが,金属水酸化物のアルコール溶液または金属アルコキシドに二酸化炭素を反応させることにより,金属塩として安定にとりだすことができる。二置換体であるジエステルRO-CO-ORはエーテル様の香気をもつ液体で,カルボン酸エステルと同様に種々の置換反応を受ける。たとえば,炭酸エステルを異種アルコール中で熱するとエステル交換反応が起こる。アンモニアとの反応では,まずウレタンH2NCOORが生成し,さらにもう1モルのアンモニアが求核的に付加して尿素CO(NH2)2となる。炭酸エステルは,ホスゲンまたはクロロギ酸エステルにアルコールを作用させることにより合成される。
クロロギ酸エステルを使う方法では,2種のアルキル基の入った混合ジエステルをつくることができる。
執筆者:小林 啓二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報