エステルまたはラクトンにアルコール,酸,または別種のエステルを作用させて,酸に由来する部分(酸基)またはアルコールに由来する部分(アルキル基)の交換反応を起こさせ,別種のエステルを生成させる反応。反応は次の3種類がある。(1)アルコリシス エステルを大量のアルコール中で酸またはアルカリの存在下で加熱することにより,アルキル基の交換を行う(式(1))。(2)アシドリシス エステルを無触媒または硫酸や三フッ化ホウ素の存在下で酸とともに加熱して,酸基の交換を行う(式(2))。(3)エステル相互交換(式(3))。いずれの場合にも平衡反応であるが,工業的に重要な反応である。脂肪酸メチルとショ糖のエステル交換を利用したショ糖エステル製造,テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールのエステル交換によって合成されるテトロンなどの化学繊維製造,また,用途の広いアセトグリセリドも油脂とトリアセチレンのエステル交換によって製造される。いずれの場合にも反応速度を高めるために,ナトリウムメトキシド,水酸化アルカリなどの塩基または硫酸,ルイス酸などが触媒として用いられる。精密有機合成においてもエステル交換は骨格変換の重要な手段として使われている。その例を式(4)に示す。これは分子内でエステル交換(アルコリシス)を起こしていることになる。
RCOOR′+R″OH ⇄RCOOR″+R′OH ……(1)
RCOOR′+R″COOH ⇄R″COOR′+RCOOH ……(2)
RCOOR′+R″COOR ⇄RCOOR+R″COOR′ ……(3)
執筆者:友田 修司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
エステルにアルコール,カルボン酸,またはほかのエステルをはたらかせて,アシル基またはアルコキシ基の交換を起こさせ,あらたなエステルを生成させる反応をいう.いずれも可逆反応で,次の3種類に分けられる.
(1)アルコーリシス
R1COOR2 + R3OH R1COOR3 + R2OH
触媒:エステル化の触媒,ナトリウムアルコキシドなど.
(2)アシドリシス
R1COOR2 + R3COOH R3COOR2 + R1COOH
無触媒で加熱,または硫酸,スルホン酸,三フッ化ホウ素,スズや亜鉛などの金属セッケンを触媒に用いる.
(3)エステル相互交換
R1COOR2 + R3COOR4R1COOR4 + R3COOR2
触媒:ナトリウムメトキシド,水酸化アルカリ,塩化スズ(Ⅳ),水素化ナトリウムなど.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
エステルにアルコール、酸または他のエステルを反応させて、エステルを構成する酸基(カルボン酸の場合はアシル基)、またはアルキル基を交換する反応をいう。エステル基交換、エステル置換とよばれることもある。エステルの構造をRCOOR'とすると、一般に、次の3通りのタイプのエステル交換反応がある。
(1)アルコーリシス アルコールを作用させてアルキル基R'を交換する反応で、触媒としてナトリウムアルコキシドなどを用いる。
(2)アシドリシス 酸を作用させてアシル基RCOを交換する反応で、通常、硫酸などを触媒として用いるが、触媒なしで酸とエステルを加熱してもおこる。
(3)エステル相互交換 2種類のエステル(RACOOR'AとRBCOOR'B)の間での交換で、ナトリウムメトキシド、水酸化スズなどの触媒を用いる。
RACOOR'A+RBCOOR'B
―→RACOOR'B+RBCOOR'A
この反応は油脂の改質などに利用され、油脂工業において重要である。
[廣田 穰]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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