点頭てんかん(読み)てんとうてんかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「点頭てんかん」の意味・わかりやすい解説

点頭てんかん
てんとうてんかん

乳児に特有なてんかんの特殊型の一つで、1841年イギリスの小児科医ウェストW. J. Westが初めて報告したのでウェスト症候群とよばれる。しかし、その臨床的特徴からnodding spasm、salaam spasmus、infantile spasmなど種々の名でもよばれ、わが国では「点頭てんかん」の名で知られる。発病年齢は大部分が乳児期、とくに5~7か月に好発し、性差はみられない。特徴的な発作像および脳波異常を呈し、成長するにしたがって精神運動発達障害が、大部分の例に認められる。

 けいれん発作の型は、なんの前触れもなく突然、瞬間的に筋の異常緊張が全身におこり、上肢を振り上げ、下肢は股(こ)関節と膝(しつ)関節で屈曲させ、頭部は胸部に向かって前屈する。この1回の発作は数秒で終わるが、これを数回から数十回繰り返してシリーズを形成することが多い。このシリーズは少なくとも1日1回以上、大多数は数回以上認められ、入眠まぎわ、覚醒(かくせい)直後に好発する。脳波は、特有なヒプサリスミアhypsarrhythmiaとよばれる高度異常を呈する。これは、棘(きょく)波と徐波が時間的および空間的にまったく無秩序に出現し、全体的に高振幅であることが特徴である。

 点頭てんかんは種々の基礎疾患、すなわちフェニルケトン尿症、低血糖症慢性硬膜下血腫(けっしゅ)など、先天性の脳障害や代謝異常に起因することが多いので、まず、原因究明に努力し、その治療にあたる。発作のコントロールには、通常の抗けいれん薬は効果が少なく、したがって、ビタミンB6大量療法やホルモン療法などを行う。ホルモン療法には、副腎(ふくじん)皮質ホルモンの経口療法および副腎皮質刺激ホルモンの筋肉注射療法があり、効果ならびに副作用の現れ方に差はあるが、著効を示すことが多い。

[山口規容子]

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