出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
略称ACTH.コルチコトロピンともいう.下垂体前葉ホルモンの一つ.ACTHは副腎皮質に作用して副じん皮質ホルモンの生成,分泌を促進することによりストレスを和らげる.生合成の際の前駆物質は,ストレスに対処するためのほかのホルモン(エンドルフィンやメラノトロピン(MSH))も含んでおり,POMC(proopiomelanocortin,図)とよばれている.種々の動物の下垂体から抽出,精製されており,いずれもアミノ酸39個からなるポリペプチドである.種差により一部のアミノ酸配列は異なっているが,構造はよく似ている.配列の異なる部分は25~32番目のアミノ酸部分である.生物活性が発揮されるためには全部が必要でなく,N末端部から20~24番目のアミノ酸配列でよいとされている.ヒトおよびブタのACTHは,1972年,B. Rinikerらによりアミノ酸配列が訂正され,ヒトのACTHのアミノ酸配列は,次のとおりである.
SYSMEHFRWGKPVGKKRRPVKVYPNGAEDESAEAFPLEF(一文字表記はアミノ酸の項を参照).
ACTHは副腎に作用し,糖質コルチコイドの分泌を促進することにより間接的に糖代謝を調節するとともに,副腎以外の組織にも作用し,脂質代謝や糖代謝の制御を行っている.一部で,MSHと同一アミノ酸配列をもつためにMSH作用をもっている(図).さらにコルチコイドの分泌促進作用による抗炎症作用もみられている.種差共通のN末端部1~24番目のアミノ酸ACTHの合成品は化学的に純粋であり,アレルギー,アナフィラキシーなどの副作用がないので,副腎皮質機能検査,副腎皮質ステロイド剤の減量,離脱などに用いられている.[CAS 9002-60-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
下垂体前葉から分泌され、副腎皮質に働いて副腎皮質ホルモンの生合成と分泌を促すホルモンをいい、略してACTHとよぶ。生体に不安緊張、外傷や手術による痛みなどの肉体的・精神的ストレスがかかると、ACTHが分泌され、その結果として副腎皮質ホルモンの分泌が促されて、それらのストレスから身を守るように働く。ACTHは、下垂体前葉に存在するACTH産生細胞で合成され、分泌される。39個のアミノ酸が直線的につながったポリペプチドで、分子量は約4500である。ACTHの副腎皮質刺激作用は、ACTH分子のN端から1~18位のアミノ酸の部分に存在する。19~39位までのアミノ酸は、ACTHの不活性化を防ぐ働きと、ACTHの抗原としての働きがある。また、ACTHには黒色素胞刺激作用があるが、これはACTHのN端側の1~13位にα‐MSH(黒色素胞刺激ホルモン)を含むためである。
下垂体からのACTHの分泌は、視床下部の正中隆起に存在するACTH放出ホルモン(コルチコトロピン放出ホルモン、略してCRH)によって調節されている。下垂体から血液中へ放出されたACTHは、ヒトの場合約9分でその生物活性が半分に減少する。ACTHは副腎皮質の細胞を刺激して糖質コルチコイドを分泌させる。血中の糖質コルチコイド濃度が高くなると、ACTHの分泌を抑制するように働く。逆に血中の糖質コルチコイド濃度が低くなると、ACTH分泌を刺激するように働く。このような調節の仕組みをネガティブ・フィードバック機構とよぶ。ACTH分泌には、ストレスに対するときのほか、日内でのリズムがあり、ヒトでは朝の起床直後に血中濃度が最高となり、夕方から就寝時にかけて最低となる。深夜労働者とか夜行性の動物では、逆に夕方目覚めるころに血中ACTH濃度が最高になり、朝の就寝時に最低となる。この日内リズムは、視床下部からのACTH放出因子の日内リズムによるもので、末梢(まっしょう)血中の糖質コルチコイドの濃度の変化には無関係である。
[小林靖夫]
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「ACTH」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…副腎皮質刺激ホルモンadrenocorticotropic hormoneの略。アクスともよみ,コルチコトロピンcorticotropinともいう。…
…
[前葉と前葉ホルモン]
腺下垂体の前葉からは数多くのホルモンが分泌されるが,現在までに完全にわかっているものは6種類である。すなわち,成長ホルモン,プロラクチン,副腎皮質刺激ホルモン,甲状腺刺激ホルモン,卵胞刺激ホルモン,黄体形成ホルモンである。このほか最近の説ではリポトロピン,エンドルフィン,エンケファリンも分泌されるという。…
※「副腎皮質刺激ホルモン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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