改訂新版 世界大百科事典 「熱川」の意味・わかりやすい解説
熱川[温泉] (あたがわ)
静岡県東部,伊豆半島東海岸の賀茂郡東伊豆町奈良本にある温泉。東は相模灘に面し,伊豆七島が一望でき,西は天城連山に接している。源泉数は100を超え,地上15mも噴き上げるものが数ヵ所ある。食塩泉,泉温80~100℃。15世紀に太田道灌が発見したといわれるが,温泉地が形成されたのは明治末期で,キヌサヤエンドウの栽培に成功した地元地主層が旅館の経営をはじめた。その後,バス路線の開通などの交通事情の改善を背景に,1936年には伊東の旅館資本が進出,38年の国鉄(現JR)伊東線の開通により湯治客が増加した。近隣の片瀬,白田,大川の各温泉地もこのころ形成された。50年代後半以降,有料道路東伊豆道路の開通を契機に温泉利用の観光施設が立地し,61年の伊豆急行開通後,とくに外来資本による温泉旅館の増加が著しい。温泉街は伊豆急伊豆熱川駅から海岸までの傾斜地に形成され,背後はミカン山となっている。また山手には東京資本のリゾートマンションが建設されている。1958年地元資本により建設された熱川バナナ・ワニ園は,豊富な温泉熱を利用して,ワニの飼育,バナナ,パイナップル,洋ランなどの栽培をしている。
執筆者:塩川 亮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報