水素と酸素を化学反応させて電気をつくる燃料電池を動力源とした自動車。この化学反応は水を電気分解して、水素と酸素を取り出すことの逆の仕組みになる。燃料電池電気自動車ともいわれ、走行時に排ガスをまったく出さないことから究極の環境車といわれている。英語名の頭文字をとってFCVともいう。
燃料電池自動車には固体高分子形の燃料電池が使われている。固体高分子膜(電解質膜)をプラスとマイナスの電極板が挟む構造で、これをセルとよぶ。セルのプラス側は酸素極、マイナス側は水素極で、これらに刻まれた数多くの細い溝を酸素と水素が電解質膜を挟んで通過することで反応がおこり、電気が発生する。しかし、1枚のセルの出力はごく少ないため、多くのセルを重ねることで出力を増している。セルをひとまとめにした集合体を燃料電池スタックまたはFCスタックとよぶ。
燃料電池に必要な酸素は大気中に存在し、また水素も自然界に存在する物質であり、さまざまな原料から生成することができる。燃料電池車が走行中に排出するのは水(H2O)だけであり、環境や資源に負荷をかけない持続可能な移動手段(サステイナブル・モビリティ)として、普及が期待されている。世界の大手メーカーが実用化に向けて開発にあたっており、トヨタ自動車は2002年(平成14)から世界に先駆けてトヨタFCHVを日本とアメリカで限定販売している。
燃料電池自動車が広く普及するための課題は、機構開発面では、燃料電池自体の価格を大きく引き下げること(コスト削減)、装置の小型軽量化、車体への水素の搭載方法、FCスタックの耐久性向上などがあげられている。また実用上の課題は、水素を補給する場所(インフラ)の拡充のほか、水素の安全な供給方法、1回の水素充填(じゅうてん)で走行可能な距離の向上、低温時の始動を容易にすることなどがあげられている。こうした問題も解決に向かっており、2014年12月にはトヨタ自動車が史上初の量産型燃料電池自動車の販売を開始。実用化に向けて動き出した。燃料電池車開発とそのインフラ整備には多大なコストを伴うことから、これが転機となって企業の提携などの動きが予想されている。
[伊東和彦]
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