物の本(読み)モノノホン

デジタル大辞泉 「物の本」の意味・読み・例文・類語

もの‐の‐ほん【物の本】

その方面についての事柄が書かれている本。「物の本によると」
総称書物
東京の―など書く人達は」〈左千夫・隣の嫁〉
江戸中期以後、物語類の書物をいう。
学問的な内容の書物。草紙などに対していう。

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精選版 日本国語大辞典 「物の本」の意味・読み・例文・類語

もの【物】 の 本(ほん)

① 本の総称。書物。書冊
※清原国賢書写本荘子抄(1530)一「疏に、物の本(ホン)の名とも人の名ともするぞ」
② 学問的な内容の書物。教養のためのかたい書物。娯楽的な読物の草紙などに対していう。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)九「物の本とももしかしかと見いではと思て天子の秘書郎と成たいと求めてなったぞ」
江戸時代の中期以後、物語類の書物をいう。
※柳亭種彦日記‐文化七年(1810)二月二日「百廿人女郎仏ごせん門左エ門作、物の本二冊かりる」
④ その方面のことが書かれている書物。
富嶽百景(1939)〈太宰治〉「ものの本によると、清姫は、あのとき十四だったんだってね」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の物の本の言及

【元禄時代】より

…ことにこの時期,板木印刷の技術的発展に支えられた出版業の活発化,それと連動した本屋,貸本屋の活動には注目すべきものがあった。近世の出版には〈物の本〉と呼ばれた仏書,漢籍を中心とする高度な教養書と,〈草子〉と称される大衆的書物があったが,元禄期にはとりわけ草子類の出版物の増加が顕著となり,従来の口伝や写本による情報伝達からマス・コミュニケーションへの展開が進行しつつあったことをうかがわせる。それは浮世草子など文学作品の普及に寄与したばかりでなく,各分野における図録,全集など多彩な出版文化を展開させ,文化的情報の伝達に大きな変化を与えた。…

【本】より

… 江戸は新開地で気風も荒く,上方とは様相が異なっていた。京都では史書,軍書,医書,儒書などは〈物の本〉と呼び,その版元を〈物の本〉屋というのに対し,江戸では版元を,板木屋と公称した(〈本屋〉の項を参照)。江戸では出版物も十数枚綴じの古浄瑠璃本や絵入本が主であったが(現存のうち《にしきど合戦》(1665)が古いほうである),これより以前の正保年間(1644‐48)の〈武鑑〉あたりから出版が始まったといえよう。…

※「物の本」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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