( 1 )もと、①のように、巻物に対して、紙をとじ合わせた本をいった。これは平安時代中頃から盛んに作られ、②の仮名で書かれた日記・物語・随筆・歌集などの多くが、この仕立だったので、公的なものに対する私的なもの、簡略でとりとめないものなどと考えられるようになり、③の意が生じ「草子」「草紙」の表記が行なわれるようになった。
( 2 )室町期以後、非知識層を対象とした気楽な読み物の意が一般化し、「物の本」に対する語として、④の文学ジャンルを広くさす名称となった。また、⑤は①の形が用いられている故に生じた意味である。
紙を綴(と)じたものおよび綴じてつくった書物の総称。「草子」「冊子」「策子」「双紙」などの字もあてる。製本形式の一つで、粘葉綴(でっちょうとじ)、胡蝶(こちょう)綴、大和(やまと)綴、袋(ふくろ)綴など綴じ方は多様であるが、紙を重ねて糊(のり)または糸、こより、紐(ひも)などで綴じたものをいう。古代から行われていた「巻子本(かんすぼん)」(巻物)にかわって、中国では唐代(7~9世紀)、わが国では平安初期(9世紀初頭)からみられるが、空海が唐から将来した『三十帖(さんじゅうじょう)冊子』が原形と思われる。
大きく、糊綴と糸綴に分けられるが、糊綴は「粘葉綴」といい、二つ折りにした料紙の折り目の部分に糊をつけて重ねていく方法。初めは巻子本同様、これに表紙と紐をつけてくるんでいた(『三十帖冊子』がこの形式)が、のちには表紙も糊付けした『元暦(げんりゃく)校本万葉集』や『御物粘葉本朗詠』の形となった。
糸綴は3、4枚ずつ重ねた料紙を二つ折りにし、その折り目の部分を糸で綴じるが、その形態から「胡蝶綴」「襲(かさ)ね綴」などとよぶ。『関戸本(せきどぼん)古今集』『元永本(げんえいぼん)古今集』などがこれで、平安中期以降もっぱらこの技法が用いられた。『一条摂政(せっしょう)集』などにみられる「大和綴」は、重ねた料紙の背に近い部分に二ないし四か所錐(きり)で穴をあけ、こよりまたは紐で綴じたもので、簡便な仮綴から始まった形だが、しだいに表紙や紐がりっぱになっていった。「袋綴」とは、料紙を二つ折りにして重ね、表紙と裏表紙をつけて糸で四か所綴じる形式をいう。綴じ穴が四つあるところから「四つ目綴」ともよばれる。中国の明(みん)代(14~17世紀)の製本形式が室町時代にわが国に入り、江戸時代に流行した技法である。
[植村和堂]
なお「そうし」ということばは、古くは物語、日記、歌書などの和文で記された書物(例『枕草子(まくらのそうし)』)を、近世では御伽(おとぎ)草子、草双紙、絵草紙のように、絵本や挿絵入り小説本の総称、あるいは字を習うための手習草紙をさすなど、さまざまに用いられている。
[小川乃倫子]
…したがって〈物の本屋〉=本屋は,宗教書,学問書,教養書などの書物を商う者の称であった。これに対して,娯楽的な書物は草紙(草子)といわれ,これを商う者は草紙屋,絵草紙屋と称された。江戸時代には総称して本屋ともいったが,正式には取扱い品目,名称が区別されていた。…
※「草紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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