精選版 日本国語大辞典 「物忩」の意味・読み・例文・類語
ぶっ‐そう【物忩・物騒サウ】
- 〘 名詞 〙 ( 形動 )
- ① ざわついて落ち着かないこと。また、そのさま。
- [初出の実例]「宮中物忩」(出典:玉葉和歌集‐承安三年(1173)八月一五日)
- 「人おほく成りぬれば物忩になり」(出典:筑波問答(1357‐72頃))
- ② やり方があわただしく、あわてたさまであること。また、そそっかしいさま。
- ③ 危険なこと。あぶないさま。
- [初出の実例]「道路之間、取レ物害レ人、如レ此物忩、日夜不レ絶」(出典:朝野群載‐二二・天暦四年(950)二月二〇日)
- 「世のなかを物騒に思ひ出した」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉七)
物忩の語誌
( 1 )「観智院本名義抄」に「忩 イソガハシ」とあり、漢文訓読語といわれる「いそがはし」に接頭語「もの」が付いた「ものいそがはし」が漢語化したものと考えられる。
( 2 )歴史的かなづかいは、「ものさわがし」の音読として「ぶっさう」とされることもあったが、「さう」と「そう」との発音に区別のあった室町期以前の表記が「物忩(ぶっそう)」であるところから見て疑問である。「物騒」の表記は、後に意味・字音の「忩」と「騒」との近似から生じたものか。