日本大百科全書(ニッポニカ)「音読」の解説
音読
おんどく
(1)漢文を、その語順のとおり、全部字音で読むこと。漢文を、日本語の文法に準じて訳読する「訓読」に対していう。
(2)印刷されたり手記されたりした文字言語を音声化して読むこと。文字言語を音声化しないで(内言化して)読む「黙(目)読」に対していう。一般に子供の読みは、音読から微音読、唇読(声は出さずに唇だけを動かして読む)を経て黙読へと発達する。大人の日常生活では黙読がもっとも普通の形式になっているが、文章の種類や読む目的によって音読することもある。音読には、理解のための音読と、理解したものをその意味内容に即して表現し、他人に伝え、鑑賞させるための音読とがある。後者は、前者と区別して「朗読」「表現読み」とよばれることもある。
読むことの学習指導においては、音読は、速度に限界があって速く読みすぎることがない、口と耳とを働かせながら読むので理解を助け深める、読解の程度を判断できる、読むことの矯正指導ができる、発声・発音などの指導ができる、話しことばと関連した事項の指導ができる、などの点に長所がある。また朗読は、文字言語の音声化を通じて、その言語作品の内容、解釈などを豊かに表現しようとするものであり、1人で朗読するほかに、役割を決めて読む「役割読み」、一人読みと集団読みとで組み立てていく「群読」、読むだけでなく簡単なしぐさをつけていく劇化などの方法がある。
[大槻和夫]