日本大百科全書(ニッポニカ) 「特殊事件捜査班」の意味・わかりやすい解説
特殊事件捜査班
とくしゅじけんそうさはん
身代金(みのしろきん)目的誘拐事件や人質立てこもり事件等に対応するために、警察の刑事部門に置かれている捜査班。全国統一の公式名称はないが、警視庁などでは、Special Investigation Teamからとった「SIT(エス・アイ・ティー)」をチームの通称としている。1963年(昭和38)に起きた吉展(よしのぶ)ちゃん事件(4歳の男児が誘拐され身代金を奪われた事件。2年後に犯人が検挙され、遺体が発見された)における捜査の不手際に対する厳しい批判を受けて、翌1964年に警視庁が特殊犯捜査係を設置したのが最初である。1970年に警察庁が制定した「刑事警察刷新強化対策要綱」によって、全国に設置された。高度な科学的・専門的知識や技術を必要とする事件の捜査を任務とし、国内で起きるほぼすべての身代金目的誘拐事件や人質立てこもり事件に出動するのをはじめ、現場設定を伴う企業恐喝事件、航空機や列車の大規模事故の捜査なども担当する。身代金誘拐事件に対処するために、高度に秘匿して捜査活動を展開できる能力を有する。人質立てこもり事件では、説得交渉にあたる専門的な知識・技術を有するネゴシエータを擁するほか、高性能自動式拳銃、音響閃光(せんこう)弾、防弾資機材等の装備を有し、突入・制圧訓練を重ねている。警視庁、大阪、北海道、愛知、福岡の5都道府県警察に「特殊班派遣部隊」が編成されて全国的な応援態勢が設けられているほか、事案によっては、特殊急襲部隊(SAT)との連携を図ることになっている。
[田村正博 2015年6月17日]