猿女(読み)サルメ

デジタル大辞泉 「猿女」の意味・読み・例文・類語

さる‐め【猿女/×猨女】

古代神祇官に属し、大嘗祭だいじょうさい鎮魂祭などのときに、神楽の舞などの奉仕をした女官

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精選版 日本国語大辞典 「猿女」の意味・読み・例文・類語

さる‐め【猿女・猨女】

  1. 〘 名詞 〙 令制で、神祇官の職の一つ。縫殿寮(ぬいどののつかさ)に代々出仕し、大嘗祭(だいじょうさい)や鎮魂祭などの神事の時に、神楽の舞などの奉仕をした女官。女でその家柄の職を継いでいた。定員四人。→猿女の君
    1. [初出の実例]「中臣、斎部、猨女(サルメ)、鏡作、玉作、盾作(ぬひ)、神服(はとり)倭文(しつり)、麻続(をうみ)等の氏有る可し」(出典古語拾遺(嘉祿本訓)(807))

猿女の語誌

( 1 )天の岩屋戸神話で舞をまった天鈿女(あめのうずめ)に通じ、もとは呪術的性格を帯びた神懸り的な術を行なう巫女であったと思われるが、令制以後その性格は失われた。
( 2 )鎮魂祭では御巫に続いて舞をまい、大嘗祭では中臣・忌部と御巫・猿女が天皇の前行を務めた。中世になると次第に衰退し、形骸化したようである。

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世界大百科事典(旧版)内の猿女の言及

【天鈿女命】より

…この神は,天孫降臨の際に一行を待ち伏せた異形の神を屈服させ,猨田彦大神(さるたひこのおおかみ)という名やその参上の由来を明らかにした。この功によりウズメの裔は猿女君(さるめのきみ)と称することになったという。猿女,猿楽の〈猿〉は〈戯(さ)る〉の意で,猿女という名も宮廷神事に滑稽なわざを演ずる俳優(わざおぎ)を意味した。…

【猿女氏】より

鎮魂祭に奉仕する,猿女と呼ばれる女性を貢進した古代氏族。天孫降臨に際し,その先導となった天鈿女命(あめのうずめのみこと)を祖と伝える。…

【稗田阿礼】より

…さらに平安朝のものとはいえ,阿礼が天鈿女(あめのうずめ)命の後裔(こうえい)であるとする資料(《弘仁私記》序)も見逃せない。アメノウズメは,天の岩屋戸神話,天孫降臨神話などでシャーマン的な能力を発揮した女神で,猿女(さるめ)氏の祖である。猿女とは古くは原始的呪的伝統をひく〈をこ〉(滑稽)なる歌舞をもって宮廷神事に仕えた巫女で,アメノウズメの話はその職掌起源譚であった。…

※「猿女」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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