…4・5世の団十郎に至り,役柄の範囲が広がるとともに,実悪(じつあく)系の凄みの隈も加えられた。隈取は取りかたと色彩とにより,約50種ほどに大別され,役々を類型化してとらえる思考によって,1種類の隈が諸種の役々に併用されるのがふつうで,〈猿隈〉が朝比奈役にのみ用いられるなどは,むしろ例外といえよう。また同一の役でも,たとえば《菅原伝授手習鑑》の梅王が〈車引の場〉と〈賀の祝の場〉とでは隈取に変化があり,《国性爺合戦》の和藤内は〈鴫蛤(しぎはまぐり)の場〉〈千里ヶ竹の場〉〈桜門の場〉までと,〈紅流しの場〉以降とでは,それぞれに用いる隈を変えるなど,人物の性格に即するというより,場面場面における役割を役柄とする思考がこうした変化を生むとみられよう。…
※「猿隈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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