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荒事 あらごと

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

荒事
あらごと

歌舞伎の特殊な演技演出の一つで,超人的な力をもった主人公がその勇猛ぶりを見せるもの。きわめて様式的,誇張的な演出で,使用するかつら,衣装,小道具なども非写実的誇張がある。1世市川団十郎延宝1 (1673) 年,江戸中村座の『四天王稚立 (してんのうおさなだち) 』で演じたのが最初で,以後代々の団十郎が継承して市川家の家の芸となるとともに江戸歌舞伎の特色となった。歌舞伎十八番の『 (しばらく) 』『矢の根』などはその代表的演目であるが,『国性爺合戦 (こくせんやかっせん) 』の和藤内,『車引』の梅王丸,『伽羅先代萩 (めいぼくせんだいはぎ) 』の荒獅子男之助の演技などにもみられる。

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百科事典マイペディアの解説

荒事【あらごと】

歌舞伎の演出法の一つ。超人的な強さを表すため,顔に隈取(くまどり)をし,扮装(ふんそう),動作,発声などにわたって様式的・誇張的な演技を行うこと。またその役柄をいう。
→関連項目大薩摩節坂田藤十郎実事つらね松本幸四郎六方

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世界大百科事典 第2版の解説

あらごと【荒事】

歌舞伎の演技様式の一つ。《暫(しばらく)》や《矢の根》の主人公,《曾我の対面》の五郎,《菅原伝授手習鑑》の〈車引の場〉の梅王丸などに代表される,稚気に溢れ,力に満ちた勇壮活発な人物の行動を表す。六方見得つらね隈取,三本太刀など,独特の表現や小道具を伴うのが常で,7,8歳の子供の心で演じよとか,くくり猿のように体を丸くして演じよといった心得が伝えられている。語源は俗に荒武者事の略といわれているが,定かでない。

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大辞林 第三版の解説

あらごと【荒事】

歌舞伎で勇士・鬼神の類を主役とする勇壮な狂言。「暫しばらく」「鳴神」など。また、その荒々しい所作。元禄(1688~1704)頃初代市川団十郎が始め、江戸歌舞伎の特色となった。 → 和事わごと実事じつごと

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

荒事
あらごと

歌舞伎(かぶき)独特の演技、演出法。豪傑、神仏、妖魔(ようま)などの超人的な強さを表現するために、顔や手足に隈取(くまどり)をし、鬘(かつら)、衣装、小道具、動作、発声など、すべて様式的に表現する。通説では、初世市川団十郎が当時流行した金平浄瑠璃(きんぴらじょうるり)にヒントを得て、1673年(延宝1)9月江戸・中村座上演の『四天王稚立(してんのうおさなだち)』で初めて演じたといわれるが、その土台には、初期の歌舞伎に多くみられた武士、男伊達(おとこだて)、奴(やっこ)、敵(かたき)役などが演じる荒々しい演技があったと考えられる。ただ「荒事」の語源には、単に荒っぽいという意味のほか、神が現れることを意味する「あれる」があるといわれ、それが江戸歌舞伎随一の名家団十郎の「家の芸」として継承されることによってますます明瞭(めいりょう)になり、江戸歌舞伎の特色として定着するようになったものである。その演出は『暫(しばらく)』『矢の根』をはじめ「歌舞伎十八番」のほとんど全演目に行われ、ほかにも『国性爺(こくせんや)合戦』の和藤内(わとうない)、『菅原(すがわら)』(車引(くるまびき))の梅王丸・松王丸、『千本桜(せんぼんざくら)』(鳥居前(とりいまえ))の忠信(ただのぶ)、『先代萩(せんだいはぎ)』(床下(ゆかした))の男之助(おとこのすけ)など、多くの役に用いられている。[松井俊諭]

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世界大百科事典内の荒事の言及

【市川団十郎】より

…通説に従うと1673年(延宝1)江戸中村座の《四天王稚立(してんのうおさなだち)》に,14歳で初舞台。この時坂田金時の役で,全身を紅で塗りつぶし,紅と墨で顔に隈(くま)を取り,童子格子の衣装に丸ぐけ帯,大太刀をはき,斧をひっさげて登場,豪快な荒事を演じて喝采を博したという。荒事の創始である。…

【歌舞伎】より

…〈事(こと)〉と呼んだ,演技・演出の類型が数多く形成された。江戸では,初世市川団十郎が創始したとされる荒事(あらごと)が,武士階級を中心に形成された新興都市の荒々しい気風に合致して喜ばれ,非常な人気を獲得した。一方,京都では,初世坂田藤十郎を代表として,初期歌舞伎の傾城買の狂言の伝統を受け継ぐ和事(わごと)の演技様式が確立する。…

【曾我物】より

…源頼朝幕下の重臣工藤祐経(すけつね)に,父河津祐泰を討たれた遺子の十郎祐成(すけなり)・五郎時致(ときむね)の兄弟が,18年目に富士の裾野の巻狩で工藤を討った事件は《曾我物語》になり,幸若舞,能,古浄瑠璃をはじめおびただしい数の演目で,特に江戸の大衆に喜ばれた。近松門左衛門も人形浄瑠璃のために書いたが,歌舞伎では,江戸の荒事が五郎という人物を典型化したので,代々の市川団十郎がこの役を演じた。元禄(1688‐1704)ごろの上方では,〈盆曾我〉といって7月に曾我物を上演する慣習があったが,1709年(宝永6)以後江戸では正月に曾我を演ずることが多く,享保(1716‐36)ごろからは初春の吉例となって三座ともに必ず曾我狂言を上演する習慣が生まれ(初春狂言),まったく別の世界の人物に対しても,実は曾我五郎という筋にしたりすることになった。…

※「荒事」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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