朝比奈(読み)アサヒナ

デジタル大辞泉 「朝比奈」の意味・読み・例文・類語

あさひな【朝比奈】[姓氏]

姓氏の一。中世近世は「あさいな」とも。
[補説]狂言曲名別項。→朝比奈
「朝比奈」姓の人物
朝比奈秋あさひなあき
朝比奈隆あさひなたかし
朝比奈知泉あさひなちせん
朝比奈泰彦あさひなやすひこ
朝比奈義秀あさひなよしひで

あさひな【朝比奈】[狂言]

狂言。閻魔えんま王が六道の辻亡者を待っていると、朝比奈三郎義秀)が来るが、逆に負かされ、極楽浄土に案内させられる。

あさいな〔あさひな〕【朝比奈】

あさひな

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精選版 日本国語大辞典 「朝比奈」の意味・読み・例文・類語

あさひな【朝比奈・朝夷】

  1. ( 中世、近世は「あさいな」か )
  2. [ 1 ]
    1. [ 一 ] 朝比奈三郎および彼にまつわる伝説などをいう。→朝比奈義秀
    2. [ 二 ] 謡曲。四番目物。廃曲。作者不詳。和田氏の乱の時の朝比奈三郎の奮戦ぶりを主題にしたもの。
    3. [ 三 ] 狂言。各流。閻魔(えんま)王が、朝比奈三郎を地獄へ連れ去ろうとするが、逆に負かされ、おどかされて極楽浄土に案内する。
  3. [ 2 ] 〘 名詞 〙あさひなちまき(朝比奈粽)」の略。
    1. [初出の実例]「朝比奈(アサヒナ)の黒焼さ」(出典:咄本・蝶夫婦(1777)足留の盃)

あさいなあさひな【朝比奈・朝夷】

  1. あさひな(朝比奈)

あさひな【朝比奈】

  1. 姓氏の一つ。

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日本歴史地名大系 「朝比奈」の解説

朝比奈
あさひな

和名抄」に載る益頭ましず朝夷あさひな郷の郷名を継承するとみられる中世の地名で、現在の岡部町北部に比定される。朝比奈・朝比奈山あるいは朝比奈谷と表記される。弘安七年(一二八四)七月一三日の某袖判書下写(土佐国蠧簡集残篇)に朝比奈山とみえ、左衛門尉頼資に朝比奈山地頭代職が安堵されている。頼資という人物は不詳であるが、この文書は今川家臣であった朝比奈氏に伝えられたもので、朝比奈氏の先祖と考えられる。永享一一年(一四三九)八月二四日の某書下写(同残編)によると、朝比奈伊勢入道妙光は朝比奈山等を安堵されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「朝比奈」の意味・わかりやすい解説

朝比奈 (あさひな)

狂言の曲名。鬼狂言。〈アサイナ〉と発音する。娑婆の人間が賢くなり,仏道に帰依して極楽へ行くので地獄が飢饉となり,閻魔王は自身六道の辻へ出て罪人を捕らえて地獄に責め落とそうとする。そこへ,武勇を誇る朝比奈(三郎)義秀が来合わせたので,閻魔は責めたてるが,朝比奈は動じない。和田合戦の話をせよというと,朝比奈は合戦の様子を語りながら閻魔を手玉にとり,七つ道具を持たされた閻魔は,朝比奈を極楽浄土へ案内するはめになる。朝比奈地獄巡りの説話を脚色した狂言といわれ,朝比奈の剛勇と閻魔の弱さとの対照が倒錯的な笑いを誘う。朝比奈の語る和田合戦の物語は,平曲太平記読みにも通じる合戦談。シテは朝比奈だが,閻魔にもシテに匹敵する技量が要求される。古作の狂言。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「朝比奈」の意味・わかりやすい解説

朝比奈
あさひな

狂言の曲名。鬼狂言。仏教大流行の当世、人間どもが極楽にばかり行くので、すっかり飢饉(ききん)に陥った地獄の主、閻魔(えんま)王(武悪(ぶあく)の面を使用)は自ら六道の辻(つじ)に出て、亡者が通れば地獄へ送り込もうと待ち構えている。そこへ、大竹をつき、血のにおいをぷんぷんさせた亡者が通りかかる。閻魔はさっそく地獄に追い落とそうと責めるが、とても歯がたたない。それも道理、相手は武将の朝比奈三郎(シテ)である。閻魔は突き転ばされ、手柄話をさんざんに聞かされたあげく、極楽への道案内をさせられてしまう。仏教説話などを通して地獄が身近な恐怖であった中世に、閻魔さえもからりと笑い飛ばす庶民の健康な現世主義がバックボーンにある。

[油谷光雄]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「朝比奈」の解説

朝比奈
〔大薩摩〕
あさひな

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
狂言堂左交
演者
杵屋六左衛門(11代)
初演
慶応3.6(江戸・中村座)

朝比奈
(通称)
あさひな

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
大磯通 など
初演
元禄1.3(江戸・中村座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の朝比奈の言及

【朝比奈】より

…娑婆の人間が賢くなり,仏道に帰依して極楽へ行くので地獄が飢饉となり,閻魔王は自身六道の辻へ出て罪人を捕らえて地獄に責め落とそうとする。そこへ,武勇を誇る朝比奈(三郎)義秀が来合わせたので,閻魔は責めたてるが,朝比奈は動じない。和田合戦の話をせよというと,朝比奈は合戦の様子を語りながら閻魔を手玉にとり,七つ道具を持たされた閻魔は,朝比奈を極楽浄土へ案内するはめになる。…

【中村伝九郎】より

…所作事にも秀でたが特に荒事系の劇術に名声を得,初世市川団十郎,初世中村七三郎とともに元禄期江戸劇壇において三幅対の名人と賞される。奴丹前(やつこたんぜん)を能くし,彼の工夫になる〈朝比奈〉には元禄の時代性を示す荒々しくかつおおどかな滑稽があり,奴荒事の真髄が示されている。糸鬢,鎌髭,猿隈,せりふのモサ詞,ならびに素袍の鶴の丸の定紋は今も朝比奈の型として残る。…

※「朝比奈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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