日本大百科全書(ニッポニカ) 「玄能石」の意味・わかりやすい解説
玄能石
げんのういし
glendonite
方解石の仮晶。玄能(ハンマー)の頭のような形、すなわち扁平(へんぺい)で縁の部分が刃のように薄くなったほぼ菱(ひし)形の輪郭をもつ。あるいは方解石を膠結(こうけつ)物質(膠結作用の役割を果たした物質)とする砂質物質からなる集合物質をいう。膠結作用とは、砂粒の隙間に炭酸カルシウムの溶液が入り込み、そこで炭酸カルシウムの鉱物である方解石の沈殿が起こり、全体が固化するという現象である。原鉱物はイカ石ikaite(Ca[CO3]・6H2O)とされ、少なくとも玄能石の一部はイカ石の合成物に形態的に相似する。この相は合成実験では、常圧で4℃~20℃の間で生成される。日本では新第三紀以降の堆積(たいせき)岩中に産し、長さ10センチメートルを超えるものがある。北海道、長野県、新潟県、福島県、東京都など中部日本以北に産地があり、西日本からはまだ発見されていない。ゲイリュサック石gaylussite(Na2Ca[CO3]2・5H2O)の仮晶といわれてきたが、この見解は否定されないものの、現在は一部のものについてはイカ石起源説が有力である。
[加藤 昭 2016年8月19日]