精選版 日本国語大辞典 「相」の意味・読み・例文・類語
そう サウ【相】
そう‐・する サウ‥【相】
しょう シャウ【相】
そう‐・す サウ‥【相】
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動詞の文法的カテゴリーの一つで,動詞のあらわす行為・過程をどのようにとらえるかの違いにかかわる範疇分け,およびその区別に基づく語形上の交替を相(アスペクトaspect)の違いという。そこで,ある行為や過程を全体として一つの点的なまとまりとしてとらえるか,あるいはその内的な展開の種々相のいずれかに着目するかといった違いによって,完了相,瞬間相,進行相,継続相,習慣相,起動相(動作や過程の開始を示す),終結相などが区別される。
aspectという用語は本来はロシア語などのスラブ語(スラブ語派)にみられる現象を示すためのものであり,日本語では〈体(たい)〉とも訳される。ロシア語では動詞はすべて完了体か不完了体のいずれかに属し,それぞれが各時制に関してそれぞれの活用形をもつ。いま(1)On napisal.と(2)Onpisal.の二つの文について,両者は〈彼(on)の〈書く〉という行為〉について述べているという点は共通である。また時制に関しても共に〈過去〉である(napisal,pisalはnapisat',pisat'の過去・単数・男性形)。互いに異なるのは〈体〉(=相)に関してであって,(1)では〈書く〉がすでに終了,完結した点に着目しているのに対し,(2)ではそうではないという違いである。不完了体は通常,〈進行・継続・反復〉などの意味をもち,(2)は〈彼は書いていた〉などと訳すことができる。(1)は〈彼は書き終えた,書いてしまった〉の意味である。
相はこのような完了体napisat'-不完了体pisat'という種類の語形の交替によって示されるばかりでなく,助動詞などを使って迂言的に示したり,特別の小辞を用いてあらわされる場合もある。たとえば英語ではHe sings.-He is singing.の対立にみられるように,be動詞+現在分詞により進行相が示される。また中国語では,已経喫了〈もう食べた〉と還在喫着〈まだ食べている〉の違いにみられるように,小辞〈了〉と〈着〉がそれぞれ完了相と持続相を示す。なお〈喫〉は〈食べる〉の意味である。このようにみてくると,日本語の〈読む〉-〈読んでいる〉にみられる〈……スル〉形と〈……シテイル〉形の対立は相の違いに基づくものであるということができるだろう。
明確な境界によって他の部分と物理的に区別できる物質系の均質な部分を相といい,その部分が,気体,液体,固体であるのに対応して,それぞれ気相,液相,固相と呼ばれる。二つ以上の気相が共存することはなく,また純粋な物質ではヘリウムを除いては二つの液相が共存することはない。固相の場合は純粋な物質でも結晶構造などが異なるいくつかの相があることもあり,これらが共存する場合も多い。このようなときには異なる相にあるといい,また,熱力学的性質,電場や磁場などの外場に対する応答の仕方などが定性的に異なる場合も相が異なるという。相が1種類の分子(または原子)だけからなるときは純相,2種類以上含む場合は溶相と呼ばれる。また物質系が,ただ一つの相からなる場合は均一系または単相系といい,二つ以上の相を含むときは,不均一系または多相系という。均一系が温度を下げたりすることによって二つまたはそれ以上の相に分かれて不均一になることを相分離,分離した相がそのまま安定に存在することを相平衡という。気相,固相などの呼び方のほかにも磁性体で外部磁場がないにもかかわらず磁化をもつ場合の相を強磁性相,また低温で電気抵抗が0になる相を超伝導相と呼んだりし,このほか液晶もその構成分子の配列の仕方によってコレステリック相,ネマティック相,スメクティック相などに区分される。なお,系が温度や圧力,その他の熱力学パラメーターの変化に伴ってある相から他の相に移ることは相転移と呼ばれる。
執筆者:小野 嘉之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
単に気相,液相,および固相をいうだけでなく,相律においては次のように厳密に定義されている.それ自身均一で,かつ系のほかの部分と物理的に明確に区別される部分をいう.気体はつねに1相であり,液体はそれが純粋であっても混合物であっても単一相である.ただし,互いに不溶性の溶液が2層をつくるような場合は2相である.固体はいくつかの相からなりうるが,固溶体は単一な相である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また〈しまる〉―〈しめる〉にみられる自動と他動の対立も,態における対立ということができる。 なお,〈態〉のかわりに〈相〉という用語が用いられることもある。【柘植 洋一】。…
…
[文法――形態面]
日本語では名詞の後に種々の助詞を用いて動詞との関係が示される。例えば〈先生が生徒に日本語を教える〉においては,助詞〈が〉は主格で動詞〈教える〉の動作主を,助詞〈に〉は与格で〈教える〉相手を,助詞〈を〉は対格で〈教える〉内容を表している。また,例えば〈たべ・させ・られ・た〉では,動詞語幹〈たべ〉に使役〈させ〉,受身〈られ〉,完了〈た〉の語尾が次々と接合されている。…
…ただし,語頭と語末以外の位置で4音素の区別を保つ(すなわち,/i/と/e/の区別を保つ)体系も標準的とされている(つまり,лиcá(キツネ)とлecá(森林――複数形)を音韻論的に同一としても,しなくてもよい)。 なお,正書法上のи[i]とы[ɨ]の区別は音声上の相違としては存在するが,まったく相補的な分布を示すので同一音素(/í/ないし/i/)と解釈される。また,/ú/,/u/,/ó/の音声的実現はすべて強い円唇性を特徴とすることに注意しなければならない。…
…位相空間【中岡 稔】(2)物理学用語。フェーズphaseともいう。振動,波動あるいは交流の電流・電圧などの周期的な現象が,一周期の中のどの状態にあるかを示す量。…
…最近は規格値より立上り時間の速い計器も使用されている。 フェーズphase位相のことであるが,オーディオ機器ではステレオチャンネルの極性を合わせるために,片方のチャンネルの信号の位相を反転させるキーやスイッチにこの名を付している。 変調雑音modulation noise信号に付随して発生する雑音で,テープ録音のときにテープ磁性層のむらやヘッドとテープの接触状態の変動などが原因で振幅変調性の雑音が生じ,テープ走行方向にテープが微振動するために周波数変調性の雑音が発生する。…
…物質が化学的,物理的に一様であるとき,その均質な部分を相と呼ぶが,一般に物質は,例えば水(液相)が氷(固相)になったり水蒸気(気相)になったりするように,温度や圧力などによって異なる相をとる。このように,物質がある相から異なる相に移ることを相転移,または相変化という。…
※「相」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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