日本大百科全書(ニッポニカ) 「理性の崇拝」の意味・わかりやすい解説
理性の崇拝
りせいのすうはい
Culte de la Raison フランス語
フランス革命中のキリスト教破棄運動で、理性を宗教上の対象とすることによって、国民をキリスト教から離そうと試みたもの。エベール、ショーメットらの過激派が推進した。1793年11月10日、「理性の神殿」と改称されたノートル・ダム大聖堂で、若い女優を女神役として、オペラ形式による「理性の祭典」が行われ、多数の国会議員も参加した。運動は地方にも及び、これにつれてキリスト教会の略奪、破壊行為も生じた。しかしキリスト教会がアンシャン・レジーム(旧制度)の支柱であったとしても、ローマ・カトリック教への信仰自体は深く国民に根ざしており、急激な非キリスト教化は社会的混乱を生み、革命に対する国民の不信を買い、また対外的に悪影響のおそれがあった。そこでロベスピエールを中心とする公安委員会など他の革命勢力は、この運動に反対し、94年3月、エベール派の没落によって運動は消滅した。
[山上正太郎]