改訂新版 世界大百科事典 「生産期間」の意味・わかりやすい解説
生産期間 (せいさんきかん)
period of production
生産期間を〈労働の成果が市場にもたらされるまでに経過せざるをえない相対的時間〉と最初に定義したのはD.リカードであるが,この概念を資本理論の中心に据えたのはE.vonベーム・バウェルクであった。彼は迂回生産は直接的生産よりもつねに大きな成果を生むとし,生産の迂回化と生産期間の長期化と資本の深化とは同義と考えた。ベーム・バウェルクが主として考察したのは,なんらかの本源的生産要素が生産に投じられてから,その成果が消費されるに至るまでの平均的時間としての平均生産期間であり,社会全体についてのこの概念は今日よく用いられる資本・生産比率概念の先駆けをなすと考えられている。
執筆者:林 敏彦
マルクス経済学
投下された資本が生産過程で労働力や生産手段などの生産資本として機能している期間を資本の生産期間Produktionszeitといい,商品や貨幣の形態をとっている流通期間とは区別される。産業資本の運動は生産過程と流通過程の2局面からなり,それぞれの時間的経過である生産期間と流通期間の和(回転期間)が,一定期間における資本の価値増殖の効率を左右することになる。そこで資本は,新しい技術や機械を採用することによって,できるだけ生産期間を短縮しようとするのである。ところでこの生産期間には,労働が実際に投下される労働期間のほかに,農作物の生育期間や醸造原料の発酵期間などのように,生産手段は生産過程にありながら労働が行われない期間も含まれる。そこでたとえば,長期の醸造期間を要するような高級ワインには,直接に投入された生産コストのみならず,費やされた期間コストを償うだけの高い価格が市場で保障されなければならないことになる。
執筆者:小池田 冨男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報