回転期間(読み)かいてんきかん

改訂新版 世界大百科事典 「回転期間」の意味・わかりやすい解説

回転期間 (かいてんきかん)

資本とは,増殖する価値の運動体であり,その姿を貨幣,商品等に転換しつつ一定期間に利潤を取得するものである。また,このような資本が生産過程根拠に利潤を取得するようになったものが産業資本であり,したがって産業資本は,たえず貨幣資本(G),生産資本(P),剰余価値を含む商品資本(W′),剰余価値を含む貨幣資本(G′)と形を変えながら増殖運動をくりかえしている。ところで資本の回転期間とは,産業資本が前貸形態の資本すなわち生産資本ないし貨幣資本の形から出発し,再び同じ資本の形に復帰するまでの期間のことを意味している。

 まず生産資本の循環に例をとってみよう。生産資本には流動資本(たとえば原料)と固定資本(たとえば機械)が含まれ,この両資本は回転期間を異にする。流動資本は1回の生産でその全価値を商品に移転し,また1回の流通で全価値を生産資本として補てんされるから,その回転期間は1生産期間と1流通期間の合計に等しい。通常回転期間と呼ばれるのは,この流動資本の回転のことである。かりに1資本の回転期間を3ヵ月とすれば,この資本は1年に4(=12ヵ月÷3ヵ月)回転したものとみなされる。したがって,農業部門における流動資本の回転は,一般に1年1回転(回転期間=1年)である。これに対して固定資本は,その価値を何回かの生産を通じて部分的に生産物に移転し,通常何年もかかって回収され,やっともとの形態に復帰する。したがって,固定資本の回転期間は,何回かの生産期間と流通期間の合計であり,流動資本のいくつかの回転期間を含む。

 他方,貨幣資本の循環で回転をみると,固定・流動資本の区別なく一定期間にどれだけ貨幣資本が投下され回収されたかが問題となる。かりに前貸貨幣資本10万円が固定資本8万円と流動資本2万円に割り当てられ,前者の1回転期間が10年,後者のそれが3ヵ月とすれば,1年間に10万円の貨幣資本が前貸しされ,固定資本8000円(=8万円×1/10),流動資本8万円(=2万円×12/3)の計8万8000円の貨幣資本が回収されたことになる。したがって,貨幣資本は1年間に平均0.88(=8万8000円÷10万円)回転したとみなされる。
執筆者: なお,回転期間(回転率逆数)という言葉は経営・財務分析上の用語としても使われるが,これについては〈財務分析〉の項目を参照されたい。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の回転期間の言及

【財務分析】より

…なお回転率は,特定の資産ないし資本またはその合計額などが一定期間(通常1年間)に何回転するかを示す動態比率の一つで,前記総資産回転率のほか,総資本回転率,棚卸資産回転率,売上債権回転率(受取勘定回転率)などがある。この逆数に365(日)を乗ずると回転期間が求められる。(2)売上利益率 売上げに対して利益がどの程度発生するかをみる指標である。…

※「回転期間」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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