産業空洞化(読み)さんぎょうくうどうか(英語表記)hollowing‐out of industries

知恵蔵の解説

産業空洞化

国内企業の生産拠点が海外に移転することにより、当該国内産業が衰退していく現象。1995年版「経済白書」によれば、(1)円高による輸出の減少、(2)輸入による国内生産の代替、(3)直接投資(=海外生産)の増大による国内投資(=国内生産)の代替、の3つのルートから製造業が縮小することにより産業空洞化が生じる、としている。日本では80年代半ばから議論され出したが、85年のプラザ合意の後、急激な円高により価格競争力を失った輸出企業が海外現地生産を本格化させた一方、4匹の竜(Four Dragons)といわれた東南アジアのNIES諸国の台頭が背景にあった。更にバブル経済崩壊後の90年代には、圧倒的に安価な労働力を武器に、世界の生産基地としての地位を急速に高めてきた中国の台頭がある。90年代後半には、中国への生産拠点の移動が、従来の繊維や食料品のような産業から、電気や機械、ソフト開発のようなハイテク部門にまで及ぶに至り、問題は一層顕在化した。空洞化がもたらす問題点には、(1)産業の衰退が地域経済の衰退や経済成長率の低下につながること、(2)企業の海外移転で国内の雇用機会が減少すること、などがある。雁行型発展論などの産業発展論の立場からは、産業空洞化は当然の流れともとらえられるが、デフレに悩む日本では深刻な問題になった。解決策は、グローバル経済の中で、日本が新たな産業構造に転換すること、すなわち、より産業の高度化(高付加価値化)を進めることである。

(本庄真 大和総研監査役 / 2007年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

産業空洞化

企業の生産拠点が海外に移転し、国内産業が衰退していく現象。雇用機会の減少につながるとされる。80年代半ば以降、急激な円高で価格競争力を失った輸出企業が海外生産を本格化させ、注目が高まった。国内市場の縮小や新興国市場の急成長、円高の進行で、電機や機械、自動車といった基幹産業の海外流出懸念が再燃している。

(2010-08-01 朝日新聞 朝刊 東海経済)

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百科事典マイペディアの解説

産業空洞化【さんぎょうくうどうか】

国内の経済活動,とりわけ製造業が直接投資などによる海外進出に伴って生産拠点が海外に移動し国内産業が衰退すること。日本では急激な円高の進行や貿易摩擦の激化による輸出の停滞に伴って,自動車・エレクトロニクスなどのハイテク産業が海外での現地生産化を進めた。このような現地生産化は日本の経済成長を妨げ,マクロ的にみた産業・経済活動に悪影響を及ぼすとして空洞化が叫ばれた。しかし,実態としては国際分業に伴う日本産業の高度化を促す圧力として考えるべきだろう。→逆輸入海外生産比率
→関連項目金融空洞化工業日本

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