魂,産巣日とも書く。古くは〈むすひ〉といい,万物を生み成長させる神秘で霊妙な力のことをいう。《古事記》には天地初発のときに天御中主(あめのみなかぬし)神と高御産巣日(たかみむすひ)神,神産巣日(かむむすひ)神のムスビの2神が出現したとあるが,本居宣長は,天地をはじめ世の中のすべてのものはムスビの2神の産日(むすび)のはたらきにより出現したのであり,世の多くの神々の中で,2神はことに尊い神であると説いている。語源には幾つかの説があり,本居宣長は〈むす〉と〈ひ〉との複合語で,〈むす〉は男子(むすこ)女子(むすめ)また〈苔むす〉などの〈むす〉と同じで,ものが成りいでることを意味し,〈ひ〉はものの霊異(くしび)なるを意味すると解する(《古事記伝》巻三)。鈴木重胤は〈むすび〉とは〈みむすび〉のことであり,〈み〉を精,〈むす〉を生産,〈ひ〉を霊的な存在と解する(《日本書紀伝》巻二)。また,〈むすび〉は一語であって〈結び凝る神秘の力〉との解釈もある(原田敏明)。なお,後世産霊の神を〈結びの神〉と当て,男女の縁をとり結ぶ神への信仰も生まれたが,本来,〈産霊〉と〈結び〉とは別語源である。
執筆者:大井 鋼悦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…生産日,生産霊とも書く。物を活発に産み出す霊力のこと。…
※「産霊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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