本居宣長(もとおりのりなが)の代表的著書。全44巻。1764年(明和1)『古事記』研究に着手し、98年(寛政10)に完成させた。宣長69歳のときであった。刊行は1790年から始め、名古屋の永楽屋から出版されたが、彼の存命中には巻17まで出されただけで、1822年(文政5)になってやっと全巻が刊行された。内容は、巻1が「古記典等総論(イニシヘブミドモノスベテノサダ)」とあり、ここに彼の古道論の結晶ともいうべき「直毘霊(なおびのみたま)」が含まれている。巻2は序文の訓読と解釈、神々から舒明(じょめい)天皇までの系図、巻3から本文注釈で、巻17までが『古事記』上巻、巻34までが中巻、巻44までが下巻である。宣長の注釈は今日なお批判に耐えうる価値をもっており、多くの研究が彼の本文校訂、訓読、語釈、注釈を、その基礎としている。ただし、古代の文献をそのまま信仰すべきことを大前提としており、しばしば非合理の世界へと飛躍するという欠点がある。
[萱沼紀子]
『大野晋編『本居宣長全集 9~12』(1968~74・筑摩書房)』▽『松本三之介著『国学政治思想の研究』(1972・未来社)』▽『相良亨著『本居宣長』(1978・東京大学出版会)』
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本居宣長の古事記注釈書。44巻。付巻1。1790-1822年(寛政2-文政5)刊。1764年(明和1)に起稿し,35年の歳月をついやして98年(寛政10)に脱稿した宣長畢生(ひつせい)の大著である。〈総論〉(巻一),序文の注釈と神統譜(巻二),本文注釈(巻三~四十四)の各部分に分かれる。〈総論〉中には,《直毘霊(なおびのみたま)》と題した特別な一編があり,宣長の古道論の要旨を述べる。本文の注釈にあたって厳正な文献批判と訓読方式をつらぬくかたわら,記述された伝承はこれをすべて信じるという立場をも堅持し,そこに見られる国学思想の投影には後世からの批判もあるが,その厳密な考証は今日でも古事記研究の基礎としての評価にたえる。
執筆者:野口 武彦
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「古事記」の注釈書。44巻。本居宣長(もとおりのりなが)著。師の賀茂真淵に研究の大成を託されて,1767年(明和4)の起稿以来,98年(寛政10)の脱稿まで30余年を費やした大著。90年に初帙5冊が刊行されたが,全冊の刊行を終えたのは没後の1822年(文政5)。第1巻は「書紀の論ひ(あげつらい)」「訓法(よみざま)の事」などのほか「直毘霊(なおびのみたま)」を収め,第2巻が序注および神統譜・皇統譜,第3巻以降が本文注。本文注では,全巻を訓読したうえで精深細密な注を施すが,その解釈は創見に満ちており,「古事記」研究史上の画期をなした。「本居宣長全集」所収。
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…1789年(寛政1)本居宣長が初めて名古屋にきたとき対面しその門人となる。師から厚く信頼され,《古事記伝》をはじめ多くの師の著書の刊刻をまかされた。著書に《土佐日記冠註》《形喰草》《長閑日記》などがあるが,宣長が死去したとき9日間その奥つ城(おくつき)を離れず朝夕墓前に仕え,それを《山室(やまむろ)日記》としてしたためたことは有名である。…
…真淵の死後49歳で本居宣長に入門。《古事記伝》第21巻の板下は彼が書いた。荒木田久老,村田春海とも交友し,門下から石川依平,服部菅雄らが出た。…
…青春期の京都遊学時代に,まず儒学の師堀景山から受けた影響は大きく,中でもその塾で契沖の著書に接したことと,荻生徂徠(おぎゆうそらい)の古文辞学にふれたことは,後の宣長学の形成にあたって決定的であった。徂徠が中国古典を対象として駆使していた文献実証の方法は,その方向を日本古代にふりむけて,後年,畢生の大著《古事記伝》を宣長に完成させる重大な示唆を与えたといってよいであろう。また,真淵との出会いから触発された和歌や物語の研究は,歌論の処女作《排蘆小船(あしわけおぶね)》に始まって,《石上私淑言(いそのかみのささめごと)》《新古今集美濃の家づと》《古今集遠鏡(とおかがみ)》《源氏物語玉の小櫛》などの著述のうちに着々と成果をあげる。…
…すなわち,本居宣長は言(ことば)を通して事(わざ)と意(こころ)を明らかにしようとしたが,それは古人の意識したことをそのままに認識して,古代生活の統一的意義を理解しようとするものであった。《古事記伝》は,《古事記》の文法的解釈にとどまらず,歴史,著述事情,文体などあらゆる角度から言語に密着して古道を説くものである。そして,《古事記伝》の方法は,中国の経学(けいがく),特に清朝の考証学または漢学と呼ばれる学問と共通する。…
※「古事記伝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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