男性と女性(読み)だんせいとじょせい(その他表記)Male and Female

改訂新版 世界大百科事典 「男性と女性」の意味・わかりやすい解説

男性と女性 (だんせいとじょせい)
Male and Female

1919年製作のセシル・B.デミル監督のアメリカ映画。第1次世界大戦直後のアメリカ女性の性風俗をもっとも大胆にエロティックに描いて,ハリウッド史上類のない物議をかもし,〈デミル伝説〉を生んだ風俗映画。原作は《ピーター・パン》の作者として知られるJ.M.バリーの戯曲《あっぱれクライトン》(1902)で,女優出身のジーニー・マクファーソンが映画用の台本を書いた。時代の先端をいく女たち,いわゆる〈フラッパー〉の台頭を察知したデミルは,清純でも妖艶でもない新しいタイプの女優グロリア・スワンソンを起用して,《夫を換ゆる勿(なか)れ》《連理の枝》(ともに1919)をつくったが,これに続くこの《男性と女性》では,孤島に漂着した執事(トマス・ミーガン)が女主人(スワンソン)たちをこき使うというシチュエーションにおいて,イギリスの貴族と使用人の主従関係の逆転を風刺的に描いた。スワンソンが入浴シーンでちらりと胸を見せたのが評判になり,また幻想シーンでは古代バビロンの〈官能にむせかえる〉栄華のイメージが描かれて,デミル好みのスペクタクル史劇の片鱗をのぞかせている。なお,この映画の広告デザインをしたのは当時18歳のウォルト・ディズニーであったといわれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の男性と女性の言及

【デミル】より

…ブロードウェーの劇作家であり演出家のデービッド・ベラスコの薫陶を受け,1913年に映画界へ入り,第1回監督作品《ザ・スコー・マン》(1913)が成功して以来,もっぱらベラスコの作品を映画化した。第1次世界大戦後のアメリカは享楽的な消費文化の時代を迎えるが,大衆の好みを察知して,《男性と女性》(1919),《何故妻を換へる?》(1920)などの〈風俗映画〉をつくった。しかし,ハリウッドがスキャンダルの都として社会の批判を浴びて自粛が叫ばれると,一転して聖書に題材をもとめた製作費100万ドルを超える超大作《十誡》(1923)をつくり,〈スペクタクル映画〉の〈巨匠〉デミルが誕生する。…

※「男性と女性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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