スワンソン(英語表記)Gloria Swanson

改訂新版 世界大百科事典 「スワンソン」の意味・わかりやすい解説

スワンソン
Gloria Swanson
生没年:1899-1983

アメリカの映画女優。サイレント時代のハリウッドを代表する大スターの一人で〈100万ドル女優〉〈女王〉と呼ばれた。シカゴに生まれ,14歳でシカゴのエッサネイ撮影所にエキストラとして雇われ,17歳でハリウッドに赴き,マック・セネットの短編どたばた喜劇に出演(〈水着美人〉の一人であった)。19歳のとき,パラマウントで第1次世界大戦後の時代にふさわしい新しいヒロインを演ずる女優をもとめていたセシル・B.デミル監督に認められて,《夫を換ゆる勿れ》《連理の枝》《男性女性》(ともに1919),《何故妻を換へる?》(1920)などの〈ベッドルームファース(寝室喜劇)〉や風俗メロドラマに主演し,26年には週給空前の2万ドルと噂された大スターになった。26年独立し,〈フィルム・ブッキング・オフィス・オブ・アメリカ(FBO)〉のJ.P.ケネディ(J.F. ケネディ大統領の父)の公私にわたる援助で〈グロリア・スワンソン・プロダクションズ〉を設立,ユナイテッド・アーチスツと契約して製作をはじめたが,エーリヒ・フォン・シュトロハイム監督が80万ドルを費やして中断せざるを得なかった《ケリー女王》(1928)で挫折(未公開に終わる)。トーキー時代に入るとともに人気が衰え,化粧品会社や衣服会社にかかわって事業に意欲をもやし,42年以後スクリーンから遠ざかるが,48年テレビの《グロリア・スワンソン・アワー》で健在ぶりを示し,ビリー・ワイルダー監督の《サンセット大通り》(1950)でカムバックし,彼女自身を思わせる往年の大スターの悲劇を堂々と演じてアカデミー主演女優賞にノミネートされた。70歳代になってもテレビ,舞台で活躍を続けたが,約70本の主演映画を残して84歳で死亡。1980年,克明に整理された記録と記憶をもとにして大部の自伝《スワンソン・オン・スワンソン》を出版したが,ハリウッド映画盛衰史のおもむきもある好著として評価されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スワンソン」の意味・わかりやすい解説

スワンソン
すわんそん
Gloria Swanson
(1897―1983)

アメリカの映画女優。シカゴ生まれ。初めマック・セネットのもとで「海水着美人」の一人として喜劇に出ていたが、セシル・B・デミル監督に認められ、『夫を変へる勿(なか)れ』『男性と女性』(ともに1919)、『アナトール』(1921)などの風俗メロドラマに主演、時代の先端をゆく華やかさでトップ女優の座につき、豪華な私生活とともに一世を風靡(ふうび)した。トーキーになって昔日の人気はなくなったが、1950年にビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』で実生活そのままのヒロイン役でカムバックして話題をよんだ。

[畑 暉男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スワンソン」の意味・わかりやすい解説

スワンソン
Swanson, Gloria

[生]1898.3.27. シカゴ
[没]1983.4.4. ニューヨーク
アメリカの映画女優。 M.セネットの喜劇で売出したが,C.B.デミルの映画に連続登場してから 1920年代のトップスターとなった。主作品『男性と女性』 (1919) ,『アナトール』 (21) 。『サンセット大通り』 (50) でカムバック。

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世界大百科事典(旧版)内のスワンソンの言及

【サンセット大通り】より

…《熱砂の秘密》(1943),《深夜の告白》(1944),《失われた週末》(1945)等々に次ぐワイルダーとチャールズ・ブラケット(1892‐1969)の名コンビが,2年来あたためていたシナリオ《豆の缶詰》に〈タイム・ライフ〉の記者であり映画批評家だったD・M・マーシュマン・ジュニアのアイデアをとり入れ,3人で共同執筆(アカデミー原作ストーリー賞および脚本賞受賞)。サンセット大通りの豪華な邸宅に住み,かつての夫を召使い兼運転手としてかしずかせ,売れない脚本家を若い〈愛人〉にし,自分のアイデアである《サロメ》によってカムバックを夢みる落(ちようらく)したサイレント映画の大女優の自己陶酔と時代錯誤ぶりを,実際に落ちぶれていた往年の大女優グロリア・スワンソンに演じさせて仮借なく冷酷に描き,200本を超えるといわれるハリウッドを題材にした映画の中でももっとも大胆でスキャンダラスでしんらつな作品になった。公開に先立ってパラマウント撮影所の試写に招かれたMGMの社長L・B・メイヤーがワイルダーをハリウッドから追放せよと叫び,一時はパラマウントが公開を取りやめると噂されたほどであった。…

【男性と女性】より

…原作は《ピーター・パン》の作者として知られるJ.M.バリーの戯曲《あっぱれクライトン》(1902)で,女優出身のジーニー・マクファーソンが映画用の台本を書いた。時代の先端をいく女たち,いわゆる〈フラッパー〉の台頭を察知したデミルは,清純でも妖艶でもない新しいタイプの女優グロリア・スワンソンを起用して,《夫を換ゆる勿(なか)れ》《連理の枝》(ともに1919)をつくったが,これに続くこの《男性と女性》では,孤島に漂着した執事(トマス・ミーガン)が女主人(スワンソン)たちをこき使うというシチュエーションにおいて,イギリスの貴族と使用人の主従関係の逆転を風刺的に描いた。スワンソンが入浴シーンでちらりと胸を見せたのが評判になり,また幻想シーンでは古代バビロンの〈官能にむせかえる〉栄華のイメージが描かれて,デミル好みのスペクタクル史劇の片鱗をのぞかせている。…

※「スワンソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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