男子の啓蒙(けいもう)教化・実用日益を主とした絵入りの書。1693年(元禄6)刊。艸田寸木子(くさだすんぼくし)著。5巻5冊。近世初期の民衆文化の向上に伴い、仮名草子などとともに発生したもので、その前年同じ著者による『女(おんな)重宝記』が好評だったところから男子向きにつくられたもの。「童男の知て重宝とするものなり」とあるように、大人になる前の年齢層の男子を対象としている。「巻之一」の初めに「男子一代の総論」として「よみかき学文の芸を第一」とし、以下一般知識から手習、詩、和歌、連歌(れんが)、俳諧(はいかい)、茶の湯、立花(りっか)、碁、将棋など諸芸にわたって記述され、最後の「巻之五」では「しつけ五十一箇条」をあげている。『女重宝記』と比べ注目されるのは、「巻之三」の半分が立花の項にあてられていることで、『女重宝記』が「女子たしなみてよき芸のあらまし」として、茶の湯、香、連歌などとともに立花をあげているのに対し、ここでは「花瓶たての事」「砂の物の事」「なげ入れの事」「諸法度の事」などいけ花の全般に触れてそのたしなみを説いている。これは、いけ花がまだこの時代にあっては女子のものではなく、男子中心の旦那芸(だんなげい)であったことを物語る。
[北條明直]
『小川武彦解説『近世文学資料類従 参考文献17 男重宝記』(1981・勉誠社)』
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