異所性ACTH産生腫瘍

内科学 第10版の解説

異所性ACTH産生腫瘍(異所性ホルモン産生腫瘍)

(2)異所性ACTH産生腫瘍(ectopic ACTH-producing tumor)
疫学
 ACTH依存性Cushing症候群を呈する患者のうち,異所性ACTH産生腫瘍は約15%を占める.神経内分泌細胞を起源とする異所性ACTH産生腫瘍は,小細胞肺癌が最も多く全体の約50%を占め,ついで胸腺もしくは気管支カルチノイドが約25%,膵島細胞腫が約10%,その他カルチノイドが5%,褐色細胞腫や卵巣腺癌や原発巣不明が残りを占める.異所性ACTH産生腫瘍はやや男性に多く,40歳から60歳に多い.
病因
 proopiomeranocortin(POMC)遺伝子からプロホルモン変換酵素によりACTHを含む複数のペプチドホルモンが生成される.異所性ACTH産生腫瘍では前駆体蛋白質からの不完全なプロセシングにより,ホルモン活性が弱い大分子ACTHや分解が進んだα-melanocyte stimulating hormone(α-MSH)やβ-MSH,corticotropin-like intermediate lobe peptide(CLIP),γ-LPH,β-endorphin(β-END)などが産生,分泌される.
病態
 腫瘍からのACTH分泌は自律性をもち,CRHやAVP投与にも血中ACTHは上昇せず,大量のデキサメタゾン投与でも抑制されないことが多い.
臨床症状
 緩徐に進行するカルチノイドによる異所性ACTH産生腫瘍では,満月様顔貌や中心性肥満などのCushing徴候を呈するが,小細胞肺癌では急速に進行して栄養状態が悪化するため,Cushing徴候は明瞭でなく,食欲不振や体重減少を呈することが多い.ACTH,α-MSH,β-MSHによる色素沈着や過剰な電解質コルチコイド作用による低カリウム性ミオパチーや高血圧,下腿浮腫などが認められる.一部のカルチノイドでは,画像検査で腫瘍が検出できず,周期性Cushing徴候を呈することがある.
検査成績
 著明な低カリウム血症,代謝性アルカローシス,高血糖,血漿ACTHおよび血中や尿中コルチゾール高値がみられる.血漿ACTHやコルチゾールの日内リズムは消失し,大量デキサメサゾン抑制試験でコルチゾールは抑制されない.CRH試験やDDAVP試験では,ACTHは無反応である.
診断・鑑別診断
 Cushing徴候ならびに低カリウム性アルカローシスを伴っていれば本症を疑い,血漿ACTHおよび血中や尿中コルチゾール測定と上記の負荷試験を施行する.一部のカルチノイドでは,Cushing病と同様の反応を示すことがあり,特異性は高くない.下垂体腺腫によるCushing病は微小腺腫のことが多く,腫瘍局在が同定できないことがあり,気管支や胸腺カルチノイドによる異所性ACTH産生腫瘍との鑑別には,注意を要する.表12-11-2に鑑別項目を示す.下錐体静脈洞もしくは海綿静脈洞にカテーテルを挿入し,末梢血と同時採血もしくはCRH負荷後に末梢側/中枢側ACTH値の比を求めて,両者を鑑別する方法が有効である.カルチノイドの局在診断にはthin slice CTやソマトスタチン受容体シンチグラフィが有用であるが,いずれの画像検査でも腫瘍が検出できない潜在性腫瘍もある.
治療・予後
 原因腫瘍に対する治療と高コルチゾール血症に対する治療がある.腫瘍に対しては手術,放射線および化学療法があるが,カルチノイドなど一部の腫瘍以外は摘出困難なことが多い.高コルチゾール血症が持続すれば感染症や耐糖能異常により,患者のQOLが低下するため,11β-ヒドロキシラーゼ阻害薬(メチラポン),3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬(トリロスタン)や副腎皮質細胞毒性作用薬(ミトタン)を投与する.経過が長期に及ぶ場合は両側副腎摘出を施行する場合もある.予後は原因腫瘍の治療によるが,カルチノイド以外は予後不良であり,異所性ACTH産生腫瘍による死因の約半数は重症感染症である.[中里雅光]
■文献
Brownlee M, Aiello LP, et al: Complications of Diabetes Mellitus. In: Williams Textbook of Endocrinology, 12th ed (Melmed S, Polonsky KS, et al), pp1462-1551, Saunders, Philadelphia, 2011.
Gagel RF: Endocrine manifestations of tumors: ectopic hormone production. In: Cecil Textbook of Medicine, 23rd ed, pp1047-1050, WB Saunders, Philadelphia, 2009.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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