白上郷(読み)しらかみごう

日本歴史地名大系 「白上郷」の解説

白上郷
しらかみごう

現益田市白上町周辺地域に所在した長野ながの庄を構成する所領単位。貞応二年(一二二三)三月日の石見国惣田数注文に「しらかみ 九丁八反」とある。鎌倉中期頃と推定される年未詳某書状(益田家文書、以下断らない限り同文書)に虫追氏が代官職を勤める所領として、市原いちはら郷とともに本・新白上郷がみえ、白上が二つに分れていたことがわかる。虫追氏の一族で白上郷を支配した一族は南朝方となったためか、建武四年(一三三七)一〇月一九日には安濃あの河合かわい(現大田市)地頭金子清忠が白上郷地頭に補任されている(「足利尊氏袖判下文」閥閲録)。貞和六年(一三五〇)四月二一日の足利直冬下文により、田村盛家に対して、金子清忠跡の白上郷が勲功の賞として与えられているが、一方、観応二年(一三五一)二月一日には幕府が来原(田村)遠盛に対して白上郷地頭職を勲功の賞として与えている(「足利尊氏袖判下文」閥閲録)。田村氏は益田氏と同様石見国在来の武士で、那賀郡来原くるばら別符(現金城町)を支配しており、南北朝期には来原を苗字として名乗っているが、それまでは幕府方として活動していた。そうしたなか、盛家が反幕府方に転じて白上郷を与えられたのに対して、幕府が田村氏一族で幕府方に止まった遠盛に敵方所領を与えたのであろう。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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