改訂新版 世界大百科事典 「相撲物」の意味・わかりやすい解説
相撲物 (すもうもの)
相撲の力士に取材した人形浄瑠璃,歌舞伎狂言の一系統。江戸時代の娯楽生活に大きな一画を占める角界と相撲取りをモデルとして,人気俳優に演じさせることは興行政策上にも有利であったところから,多くの相撲狂言が現れた。浄瑠璃では1725年(享保10)1月大坂豊竹座初演の《昔米万石通(むかしごめまんごくどおし)》(西沢一風,田中千柳作)が知られ,これを粉本とした《双蝶々曲輪日記(ふたつちようちようくるわにつき)》(1749年7月大坂竹本座),また《関取千両幟》(1767年8月竹本座),《関取二代勝負附(せきとりにだいのしようぶづけ)》(1768年9月大坂亀谷芝居)などがある。歌舞伎では《浪花曙烏(なにわのあけぼのちぶみのからす)》(雷電源八の喧嘩。1753年2月大坂三枡大五郎座,並木正三作),《花川戸身替りの段》(白藤源太。1783年3月江戸中村座,初世桜田治助作),《四紅葉思恋深川(よつもみじおもいのふかがわ)》(白藤源太。1804年1月江戸市村座,並木五瓶作),《勝相撲浮名花触》(白藤源太。1810年3月市村座,鶴屋南北作),《櫓太鼓鳴音吉原(やぐらだいこおともよしわら)》(志賀之助と仁太夫。1866年2月市村座,河竹黙阿弥作),《櫓太鼓成田仇討》(桂川力蔵と滝見山大八。1877年9月東京春木座,3世河竹新七作),《有松染相撲浴衣(ありまつぞめすもうのゆかた)》(雷電と小野川。1880年5月東京猿若座,河竹黙阿弥作),《神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)》(め組と相撲の喧嘩。1890年3月東京新富座,竹柴其水作),《櫓太鼓出世取組》(谷風と鈴鹿山,1900年1月東京明治座,竹柴其水作)などがある。
執筆者:小池 章太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報