関取千両幟(読み)セキトリセンリョウノボリ

デジタル大辞泉 「関取千両幟」の意味・読み・例文・類語

せきとりせんりょうのぼり〔せきとりセンリヤウのぼり〕【関取千両幟】

浄瑠璃世話物九段近松半二ほかの合作。明和4年(1767)大坂竹本座初演力士達引たてひを描いたもの。二段目の「岩川内(髪梳かみすき)」と「相撲場」が有名。

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精選版 日本国語大辞典 「関取千両幟」の意味・読み・例文・類語

せきとりせんりょうのぼり‥センリャウのぼり【関取千両幟】

  1. 浄瑠璃。世話物。九段。近松半二、三好松洛、竹本三郎兵衛ら合作。明和四年(一七六七)大坂竹本座初演。当時の人気力士の稲川と千田川をモデルとしたもの。関取岩川が、恩ある鶴屋礼三郎のなじみの遊女錦木の身請けの金に窮し、敵方の力士鉄ケ嶽に勝ちを譲ろうとするが、女房おとわが身を売って金を調え、晴れて鉄ケ嶽を倒すという二段目が有名。歌舞伎にはいり、二段目は、新内節・常磐津節などでも語られる。通称千両幟」。

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改訂新版 世界大百科事典 「関取千両幟」の意味・わかりやすい解説

関取千両幟 (せきとりせんりょうのぼり)

人形浄瑠璃。世話物。9段。近松半二三好松洛,竹田文吉,竹田小出雲八民平七,竹本三郎兵衛合作。1767年(明和4)8月大坂竹本座初演。通称《千両幟》。当時大坂で人気のあった力士,稲川,千田川をモデルにした相撲物。ひいきの若旦那礼三郎が遊女錦木を身請けするための不足金二百両を用立てしなければならなくなった力士岩川は,恋敵側のひいき力士鉄ヶ嶽との勝負に負けて若旦那の思いを果たさせようとする。土俵上の勝負の最中に〈二百両進上ひいきより〉の声がかかり,岩川は気をとり直して鉄ヶ嶽を倒す。この金は,実は岩川の女房おとわが,わが身を売って用意した金であった。錦木を身請けしたあと,礼三郎は鉄ヶ嶽を殺したと思い込み,錦木との心中を決行しようとするなど,筋は複雑であるが,最後は敵側の悪事が露顕し万事めでたくおさまり,岩川ともうひとりの味方の力士千羽川の2人に〈千両千両二幟〉を揚げたことから,本題名がつけられた。二段目の〈髪梳き〉と〈相撲場〉が有名で,現在ではこの場だけが歌舞伎でも上演されている。金策に悩む夫岩川の髪を梳きながら,事の真相を探ろうとする女房おとわの悩みは,〈髪梳き〉という演出の典型的な様式美で表現され,最も情緒ある場面となっている。自身の身売りを決意するまでの世話女房ぶりが見せ場であり,相撲場での夫の勝利のあと,真相を示して,夫と別れを惜しむ場も情緒的である。書替物として,68年9月の《関取二代勝負附》(八民平七,並木正三合作)があり,歌舞伎では,69年江戸森田座での2世坂東三津五郎と4世岩井半四郎の岩川・おとわが初演である。〈髪梳き〉の部分は常磐津,新内に,〈相撲場〉の部分は宮薗節などに採り入れられ,常磐津の《岩川内の段》(1835年6月江戸市村座)は相撲の櫓太鼓の曲びきで知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「関取千両幟」の意味・わかりやすい解説

関取千両幟
せきとりせんりょうのぼり

浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)。世話物。9段。通称「千両幟」。近松半二(はんじ)・三好松洛(みよししょうらく)・竹田文吉・竹田小出雲(こいずも)・八民(やたみ)平七・竹本三郎兵衛合作。1767年(明和4)8月大坂・竹本座初演。当時大坂で人気のあった力士稲川と千田川をモデルにした相撲(すもう)物で、うち二段目の「岩川(歌舞伎(かぶき)では稲川)内」と「相撲場」が今日でも上演される。力士岩川は、恩ある鶴屋の若旦那(わかだんな)礼三郎が遊女錦木(にしきぎ)を身請けする200両を調達するため、恋敵(こいがたき)九平太の後ろ盾鉄ヶ嶽(てつがたけ)との取り組みに勝ちを譲ろうとするが、女房おとわはこれを知り、身を売って金をつくる。土俵上の取り組みの最中、「二百両進上、ひいきより」の声がかかり、岩川は勇躍して鉄ヶ嶽を倒す、という筋。おとわが夫の髪を梳(す)きながら、その悩みを慰めようとする「髪梳き」の情緒的なクドキが知られる。なお、改作に翌年初演の八民平七・並木正三(しょうざ)合作の『関取二代勝負附(せきとりにだいしょうぶづけ)』がある。

[松井俊諭]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「関取千両幟」の解説

関取千両幟
せきとり せんりょうのぼり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
近松半二 ほか
補作者
川合金次 ほか
初演
明和6.2(江戸・森田座)

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世界大百科事典(旧版)内の関取千両幟の言及

【相撲物】より

…江戸時代の娯楽生活に大きな一画を占める角界と相撲取りをモデルとして,人気俳優に演じさせることは興行政策上にも有利であったところから,多くの相撲狂言が現れた。浄瑠璃では1725年(享保10)1月大坂豊竹座初演の《昔米万石通(むかしごめまんごくどおし)》(西沢一風,田中千柳作)が知られ,これを粉本とした《双蝶々曲輪日記(ふたつちようちようくるわにつき)》(1749年7月大坂竹本座),また《関取千両幟》(1767年8月竹本座),《関取二代勝負附(せきとりにだいのしようぶづけ)》(1768年9月大坂亀谷芝居)などがある。歌舞伎では《浪花曙烏(なにわのあけぼのちぶみのからす)》(雷電源八の喧嘩。…

※「関取千両幟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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