真澄鏡(読み)ますかがみ

精選版 日本国語大辞典 「真澄鏡」の意味・読み・例文・類語

ます‐かがみ【真澄鏡】

[1] 〘名〙
① 「ますみ(真澄)の鏡」の略。
古今(905‐914)冬・三四二「ゆくとしのをしくもある哉ますかがみ見るかげさへにくれぬと思へば〈紀貫之〉」
② 氷を鏡にたとえた語。
※班子女王歌合(893頃)「冬寒み水の面に懸くるますかがみ疾くも割れなむ老い惑ふべく〈作者不詳〉」
[2]
① 鏡に写る影の意で「影(かげ)」にかかる。
※後撰(951‐953頃)離別・一三一四「身をわくる事のかたさにます鏡影許をぞ君にそへつる〈大窪則善〉」
② =まそかがみ(二)③
※金槐集(1213)秋「天の原ふりさけ見ればますかかみきよき月夜に雁なきわたる」
[補注]「ますみ(真澄)の鏡」の略とする意見が通説だが、「万葉集」によく見られる「まそかがみ」の転とも考えられる。

まそみ‐かがみ【真澄鏡】

万葉(8C後)一三・三三一四「たらちねの 母が形見と 吾が持てる 真十見鏡(まそみかがみ)に」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「真澄鏡」の意味・読み・例文・類語

まそ‐かがみ【真澄鏡/真十鏡】

《「まそ」は「ますみ」の音変化、または、ととのっているものの意という》
[名]鏡をほめていう語。立派な鏡、また、よく澄んだ鏡。
「―手に取り持ちてあさな見れども君は飽くこともなし」〈・二五〇二〉
[枕]鏡のありさま・働きや置き場所などいろいろな意でかかる。
「見る」にかかる。
「―見ぬ日時なくあらましものを」〈・四二二一〉
「懸く」にかかる。
「―かけてしぬへとまつり出す」〈・三七六五〉
とこ」にかかる。
「―床の去らず」〈・二五〇一〉
ぐ」にかかる。
「―磨ぎし心を許してば」〈・六七三〉
「清し」にかかる。
「―清き月夜つくよに」〈・一五〇七〉
「照る」にかかる。
「―照れる月夜つくよも闇のみに見つ」〈・二八一一〉
面影」にかかる。
「―面影去らず」〈・二六三四〉
鏡にふたがあるところから、「ふた」にかかる。
「―二上山ふたがみやまに」〈・四一九二〉

ます‐かがみ【真澄鏡/寸鏡】

まそかがみ」に同じ。
「ゆく年の惜しくもあるかな―見る影さへに暮れぬと思へば」〈古今・冬〉

まそみ‐かがみ【真澄鏡】

ますみのかがみ」に同じ。
「たらちねの母が形見と我が持てる―に」〈・三三一四〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android