矢田部郷雲(読み)やたべ・きょううん

朝日日本歴史人物事典 「矢田部郷雲」の解説

矢田部郷雲

没年:安政4.11.30(1858.1.14)
生年:文政2(1819)
江戸後期の蘭学者。武蔵国勅使河原村(埼玉県児玉郡上里町)に農民の子として生まれた。伊豆韮山代官江川太郎左衛門(坦庵)の家臣。嘉永6(1853)年,太郎左衛門の海防策,品川台場と反射炉築造に際し石井脩三と共に新規に採用され,江戸本所の江川邸につめ蘭書翻訳に従事した。安政1(1854)年7月,幕府の長崎海軍伝習に参加。同2年6月には幕府鉄砲方付,蘭書翻訳勤方に任命された。蘭書翻訳の業績は,太郎左衛門死後に江川家から郷雲翻訳書の献上願いがなされ,書目が判明。サハルト著『警備術原』,同『窮理実験陸用砲術全書』,サロモン著『撒羅満氏産論』,他に『青銅及び鋳鉄を溶解する反射炉を録す』がある。以上の経歴業績から同4年,勝海舟が蕃書調所開設に備えた教職員候補手控えに,在府中の洋学者として記されたとみえる。江戸本所江川邸で死去。子の良吉は植物学者。<参考文献>鳥羽山瀚『江川坦庵全集』,原平三「蕃所調所の創設」(『幕末洋学史の研究』)

(岩崎鐵志)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android